選択的夫婦別姓と皇室典範改正:CEDAW勧告に揺れる日本社会
選択的夫婦別姓と皇室典範改正:国際社会からの勧告に揺れる日本
2024年10月、日本がジェンダー平等に向けた取り組みを再評価する国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の審議が行われ、選択的夫婦別姓の導入や皇室典範の改正を求める勧告が出されました。この動きは、日本の社会制度や文化に深く根付く「家父長的な態度」と「ジェンダー・ステレオタイプ」に対する国際的な疑問を浮き彫りにしています。
選択的夫婦別姓の実現に向けた道筋
元委員長である林陽子氏は、今回の勧告が過去5回の中で最も包括的で、特に選択的夫婦別姓の導入がフォローアップ事項として強調された点に注目しています。この問題は、家族の名字を統一することが子どもにとって良いという伝統的な家族観に基づき、日本社会に根強く残る価値観が障害となっていると指摘されました。しかし、2024年の衆議院選挙で自民党が少数与党となり、選択的夫婦別姓に賛成する立憲民主党の議員が法務委員会の委員長に就任したことで、実現への期待が高まっています。
林氏は、日本政府が国際条約の趣旨を真摯に受け止め、選択的夫婦別姓の導入に向けた努力を示すことが重要だと強調します。日本社会が持つ保守的な価値観を再考し、多様な家庭の在り方を受け入れることが、ジェンダー平等の実現に不可欠であると述べています。
皇室典範改正をめぐる議論
一方で、国連の女性差別撤廃委員会が皇室典範の改正を求めたことに対して、日本国内では議論が分かれています。特に保守派のメディアは、皇室の伝統を重んじる観点から反発を示しています。例えば、『読売新聞』は、男系男子による皇位継承が日本の長い歴史において培われたものであるとし、国連の勧告を「歴史や伝統を無視した発信」と批判しました。
しかし、歴史学の視点から見ると、古代の皇位継承は必ずしも男系に限定されておらず、双系的な親族構造に基づいていたことが明らかにされています。つまり、現代の皇室制度を正当化するために「歴史」や「伝統」を持ち出すことは、事実に基づかない偏った見解であると言えます。
このように、国際社会が日本の男女不平等を歴史と伝統で正当化することを批判的に見ており、国連の勧告は、ジェンダー平等の観点から日本の制度を再評価するきっかけとなっています。
「家族の日」とジェンダー平等
加えて、日本政府が2005年に制定した「家族の日」がジェンダーの平等を阻む要因として批判されています。この日が制定された背景には、家族・地域の絆を強化し、少子化対策を進めるという目的がありましたが、その理念は「日本型福祉社会」の考え方に基づいており、家族のケアを主に女性に押し付ける側面があると指摘されています。
林陽子氏も、「家族の絆」を強調する一方で、多様な家庭の在り方が受け入れられる社会の必要性を訴えています。これは、ジェンダー平等を阻む要因としての「伝統的な家族観」に対する批判でもあります。
日本が国連の勧告に真摯に向き合い、選択的夫婦別姓や皇室典範改正といったジェンダー平等の課題に取り組むことで、国際社会における信頼を回復し、より多様で公平な社会の実現に向けて大きな一歩を踏み出すことができるでしょう。新政権がどのようにこれらの課題に答えるのか、今後の動向に注目が集まっています。
[佐藤 健一]