宝塚歌劇団の芹香斗亜、退団公演で歴史と未来を紡ぐ
宝塚歌劇団の光と影:芹香斗亜の退団公演に込められた歴史と未来
宝塚歌劇団の宙組トップスター、芹香斗亜(せりか・とあ)が、長年の舞台生活に幕を下ろす退団公演「宝塚110年の恋のうた/Razzle Dazzle」が、兵庫・宝塚大劇場でついに開幕しました。新年の幕開けに合わせたこの公演は、多くのファンにとって、彼の舞台を目に焼き付ける最後の機会となります。芹香は、宝塚歌劇団の歴史と伝統を体現する存在として、観客に多くの感動を与えてきました。
異世界転生とハリウッドの光景:芹香斗亜の多様な役柄
今回の公演は、2本立ての作品で構成されています。まず、「宝塚110年の恋のうた」では、芹香が藤原定家に扮し、宝塚が扱った様々な時代の歌の世界を異世界転生のように体験します。百人一首で知られる定家の役は、歴史的な深みとともに芹香の独特の色気が漂い、観客を魅了しています。この作品は、宝塚が110年間にわたり築き上げてきた日本物の集大成とも言えるもので、過去の名曲が見事に織り交ぜられたショーとなっています。
一方、「Razzle Dazzle」は、1950年代のハリウッドを舞台にしたコメディーで、芹香が演じるレイモンドは裕福な孤児として真実の愛を探す物語です。ここでは、芹香の生真面目さとコメディセンスが光り、観客に大いに笑いを届けています。次期トップスターとなる桜木みなとが親友の映画スター役を演じ、現トップと次期トップの掛け合いが舞台を盛り上げます。
宝塚歌劇の110年:過去の影響と未来への期待
宝塚歌劇団は、今年で創立111周年を迎えます。長い歴史の中で、数々の名作を生み出し、日本の演劇文化に大きな影響を与えてきました。しかし、その裏には様々な課題も存在します。過去には劇団のメンバーの急死という悲劇的な出来事もあり、今回の公演もその影響を受けてスケジュールが変更されました。このような困難を乗り越えながらも、宝塚は常に新しい挑戦を続けています。
芹香の退団は一つの時代の終わりを告げると同時に、新しい世代へのバトンを渡す瞬間でもあります。彼の後を継ぐ桜木みなとは、宙組初の生え抜きトップスターとして、これからの宝塚を引っ張っていく存在です。彼がどのようにして新しい風を吹き込むのか、多くのファンが期待を寄せています。
芹香斗亜の遺したものと次世代へのメッセージ
芹香斗亜は、2007年に宝塚に入団し、星組や花組を経て宙組トップスターに就任しました。彼のキャリアは、宝塚の多様性と可能性を示すものであり、観客に多くの感動を与えてきました。彼の舞台での最後の姿は、多くのファンにとって感慨深いものでしょう。芹香自身も「芸の道はゴールが明確ではない」と語っており、トップスターとしての役割を全うし、次のステージに進む覚悟を示しています。
この退団公演は、単なる終わりではなく、新たな物語の始まりを象徴しています。宝塚の歴史の中で、多くのスターが舞台を去り、新しいスターが誕生してきました。芹香の後を継ぐ若い世代が、その伝統を受け継ぎ、新しい時代を切り拓いていく姿を、今後も目にすることができるでしょう。
今回の公演は、兵庫・宝塚大劇場で2月2日まで続き、その後、東京宝塚劇場で3月15日から4月27日まで上演されます。芹香斗亜の最後の舞台を見逃さないよう、多くのファンが劇場に足を運んでいることでしょう。彼の演技に心を震わせ、その瞬間を共にすることで、宝塚の未来への一歩を感じることができるでしょう。
[松本 亮太]