中村屋ファミリー、勘三郎十三回忌で新たな挑戦と絆を再確認
中村屋ファミリーの絆と挑戦:十三回忌を迎えた勘三郎さんの遺産
中村屋ファミリーに密着するドキュメンタリー・シリーズ『中村屋ファミリー』が、25作目となる『勘三郎十三回忌特別企画 中村屋ファミリー 父が遺した約束…硫黄島の奇跡』を放送しました。この作品は、十三回忌を迎えた中村勘三郎さんの追善興行を通じて、家族の成長と変化を描き出しています。
この一年、中村屋の若手たちにとっては、まさに成長の時期でした。中村勘九郎さんの妻、前田愛さんは、「今年は、何か盛りだくさんの年で、ひとつ終わったら次、ひとつ終わったら次という感じでした」と振り返ります。彼女は、義父である勘三郎さんの存在を強く感じることができたと語ります。日々の舞台や家族の支えとなっていた義父の影響は、今なお色濃く残っているようです。
次世代の挑戦と成長
2月に行われた「猿若祭二月大歌舞伎」では、中村勘九郎さんの長男、勘太郎さんが「猿若江戸の初櫓」で猿若を演じました。初めての大役に挑む勘太郎さんの不安を、叔父である中村七之助さんが支えました。舞台に立つ勘太郎さんの姿は、まるで新たな風を感じさせるものでした。
「おじじ(七之助さん)がいてくれたから、安心して舞台に出られたんだろうなと」と前田愛さんは語り、家族の絆が舞台の成功を支えたと感じています。一方、次男の長三郎さんは「連獅子」に挑戦。彼のエネルギッシュな姿勢は、まさに仔獅子そのもので、家族を元気づける存在となっています。
この若手二人の成長は、単に舞台上の技術だけでなく、家族内での役割や責任感の変化としても現れているようです。勘太郎さんは弟の長三郎さんをサポートし、長三郎さんは兄の助言を素直に受け入れるようになりました。これらの変化は、家族の中でのコミュニケーションの進化を示しています。
家族の支えと個々の成長
前田愛さんは、義父である勘三郎さんの優しさを振り返り、「やさしい言葉しかかけてもらいませんでしたし、本当にやさしくしていただきました」と涙を浮かべます。勘三郎さんの存在は、家族の中で大きな支柱となっていました。彼の影響は、今もなお家族の中で息づいています。
また、勘九郎さんの妻として、家庭と舞台の両立に奮闘する前田愛さんの姿も印象的です。「自分で考えて進んでいってるのがいいな、かっこいいなと思っていました」と夫の姿を語りつつ、彼女自身も家族の一員としての役割を全うしています。
このように、中村屋ファミリーは、伝統を守りつつ新しい世代へとバトンを渡していく過程にあります。勘三郎さんが遺した遺産は、ただの技術や名声ではなく、家族の絆や人間性といった、より深い価値観に根ざしています。勘三郎さんの精神は、彼の子どもたちや孫たちへと、確かに受け継がれているのです。
中村屋ファミリーの物語は、ただの家族の物語に留まりません。この伝統芸能の世界で、個々がどのように成長し、家族がどのように支え合い、新たな時代を切り開いていくのか。その過程は、私たちにとっても、人生のヒントとなるものを多く含んでいるのではないでしょうか。
今年一年を通して見せた中村屋ファミリーの姿は、過去と未来を繋ぐ一瞬の輝きであり、これからの挑戦へと続く序章でもあります。伝統は守るだけでなく、革新と共に歩むことで、より豊かな未来を創造するのかもしれません。勘三郎さんの十三回忌という節目の年に、彼の遺したものがどのように次の世代へと受け継がれていくのか、これからの展開に期待が高まります。
[佐藤 健一]