韓国人脚本家イ・ナウォンが描く新たな復讐劇の魅力とは
韓国人脚本家イ・ナウォンが紡ぐ新たな復讐劇の魅力
日韓のドラマ制作スタイルの違い
復讐劇の創作プロセスとキャラクター描写
『地獄の果てまで連れていく』の執筆にあたって、イ・ナウォン氏はプロデューサーの天宮沙恵子さんから提供された「復讐劇」というテーマを基に物語を構築しました。最初は漠然としたアイデアだったものが、モンスターのような人物とその復讐者の対決へと具体化されていきました。この創作プロセスでは、キャラクターシートを作成し、登場人物の背景や性格を詳細に設定することで、物語にリアリティを持たせています。
キャラクターシートとは、登場人物の情報を具体的に伝えるための資料であり、主人公・紗智子に関しては、好きな料理や子どもの頃の夢など、彼女の背景を細かく設定しました。これにより、紗智子の復讐心の根底にある感情を視聴者に伝えることができます。
俳優陣とのコラボレーション
脚本の執筆過程で、イ・ナウォン氏はキャストの写真を見てキャラクターイメージを役者さんに重ね合わせる作業を行います。特に佐々木希さんの写真からインスピレーションを受け、「この人は紗智子として、どう話すだろう」と想像しながらセリフを考えるそうです。俳優の特徴や声のトーンを考慮し、彼らに合った言葉を選ぶことで、脚本に説得力を持たせ、視聴者に感情移入を促します。
復讐劇の裏にある人間賛歌
復讐劇はただのエンターテインメントではなく、イ・ナウォン氏にとっては“人間賛歌”でもあります。彼女は、紗智子と麗奈の行動原理や感情のラインを描く上で、それぞれのキャラクターの中にある「大切なもの」を基準に物語を構築しました。紗智子にとっては復讐が最も大切なものであり、麗奈にとっても何かしらの「大切なもの」が存在します。物語が進むにつれ、麗奈の内面が徐々に明らかになり、視聴者はその背景を知ることになります。
イ・ナウォン氏は、脚本を書くことを「人間を理解するための作業」と捉え、登場人物の奥深い人間性を探求しています。彼女の熱意と探求心は、視聴者の心を揺さぶる作品を生み出し続けているのです。
[伊藤 彩花]