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2025年01月19日 09時11分

映画『サンセット・サンライズ』宮城の魅力を描くヒューマンコメディ

映画『サンセット・サンライズ』が描く震災後の宮城を舞台にした人間ドラマ

映画『サンセット・サンライズ』が公開され、宮城県仙台市のMOVIX仙台で行われた舞台挨拶では、主演の菅田将暉、脚本を手がけた宮藤官九郎、そして監督の岸善幸が登壇しました。特別ゲストには、撮影地である宮城県気仙沼市の観光キャラクター「ホヤぼーや」も参加し、会場を賑わせました。この作品は、宮城県南三陸を舞台に、都会から移住してきた釣り好きのサラリーマン・西尾晋作(菅田)と地元住民との交流を通じて、震災後の地域再生や人と人との絆をユーモラスに描いたヒューマン・コメディです。

地方と都会の交差点としての宮城

宮城県を舞台にした『サンセット・サンライズ』は、震災後の復興を背景に、地方と都会という異なる生活スタイルが交差する場所として描かれています。菅田将暉演じる西尾晋作は、都会の喧騒から逃れ、穏やかな南三陸での生活を求めて移住します。この設定は、過疎化に悩む地方が抱える現実と、都会からの移住者がもたらす新しい風を示唆しています。

映画の中で描かれるのは、単なる観光地としての宮城ではなく、生活の場としてのリアルな姿です。映画撮影中、菅田は地元を散策し、「氷の水族館」などの観光地を訪れたといいますが、彼が特に印象に残しているのは、地元住民との交流です。西尾晋作が描く水彩画も、菅田自身が練習を重ねて描いたものであり、彼の役への深い理解と情熱が伝わります。

「芋煮会」のシーンに込められたメッセージ

映画の中で特に印象的なシーンとして挙げられるのが、「芋煮会」の場面です。宮藤官九郎は、このシーンについて「震災と風化する記憶を語り合う場にしたかった」と語っています。ここで語られる「ただ来て、おいしいものを食べて帰ればいいんじゃない」というせりふは、震災後の取材で地元の人々から聞いた言葉から生まれました。宮藤らしいリアルな取材に基づく脚本は、観る者に深い印象を与えます。

芋煮会は、宮城や山形など東北地方で秋に行われる伝統的なイベントで、大勢が集まって鍋を囲み、心を通わせる場です。映画では、このシーンが単なる食事の場ではなく、心を開き合う重要な場面として描かれています。このような地域文化のリアルな描写が、映画全体に深みを与えています。

食文化を通じて見る地域の魅力

『サンセット・サンライズ』は、地域の魅力を伝えるために食文化にも焦点を当てています。劇中に登場する「モウカノホシ」や「ハモニカ焼き」など、三陸の海の幸をふんだんに使った料理は、観客の食欲をそそります。これらの料理は脚本にはなかったものの、監督がロケハン中に見つけ、映画に取り入れたものです。

菅田将暉も撮影を通じて地元の料理を堪能し、「また食べたい」と笑顔で語っています。食を通じて地域の文化や人々の暮らしを描くことで、映画は単なる観光PRにとどまらず、観る者に実際に訪れてみたいと思わせる力を持っています。

東北の魅力を発信する力

映画の公開記念イベントでは、ホヤぼーやからの花束贈呈があり、菅田将暉は「ほやボーヤもこれから羽ばたいてください」とエールを送りました。この一言には、映画を通じて東北の魅力を広めたいという熱い思いが込められています。

宮城の復興や震災の記憶を風化させないために、こうした地域に根ざした映画が全国で公開されることは重要です。宮藤官九郎と岸善幸という東北出身者による作品は、地元の人々の心に寄り添いながら、観る者に地域の魅力を伝える力を持っています。

映画『サンセット・サンライズ』は、宮城の美しい風景と温かい人々を描くことで、観る者に地域の豊かさを伝え、震災からの復興を応援する作品として、多くの人々の心に響くことでしょう。

[鈴木 美咲]

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