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2024年12月01日 10時17分

哲学界のロックスター!スラヴォイ・ジジェクが語るリベラルの愚行と権力の無恥行動

哲学者スラヴォイ・ジジェクの洞察:リベラルの愚行と権力の羞恥心なき行動

スラヴォイ・ジジェクという名を聞けば、哲学界の「ロックスター」として知られる彼の型破りな思考が思い浮かぶ。新著の出版を機にロンドンを訪れたジジェクは、英紙「デイリー・テレグラフ」とのインタビューで、政治から哲学まで幅広いテーマについて独自の見解を披露した。彼のスタイルは、高尚な理論と政治的に正しくない冗談を結びつけることで、聴衆を引きつける。彼の論調は時に大胆で挑発的であり、時にシュールなユーモアで彩られる。

ジジェクは、新著『反進歩論』で移民政策をはじめとする「リベラルの愚かな主張」が、トランプのような権力者にとって好都合であると警鐘を鳴らす。ジジェクの視点は、移民政策をめぐるリベラルな主張が、しばしば現実的な解決策を欠き、反動的なポピュリストに利用される危険性を指摘している。彼の言う「ソフトファシズム」は、既存の自由民主主義が環境危機やAIといった現代の課題に対処できないことを示唆し、国際的な協力が不可欠であると主張するが、そのためには専制主義に陥らない方法を模索する必要がある。

ガザ地区とスーダン内戦に見る権力の羞恥心の欠如

ジジェクの視点をさらに深めるために、ガザ地区やスーダン内戦の状況を考察することができる。ガザ地区では、イスラエルとパレスチナの対立が続く中で、イスラエル軍の行動がしばしば「羞恥心を知らない権力」の例として挙げられる。イスラエルの予備役兵による拷問が公然と擁護され、一部の政治家はこれを国家政策にすべきだと公言している。こうした行動は、権力が羞恥心を失ったとき、どれほど恐ろしい結果を招くかを示している。

また、スーダン内戦も、権力と暴力が絡み合った悲劇の一例だ。スーダンでは、2019年に独裁者オマル・バシルが追放されたが、その後のクーデターで民主主義への希望は打ち砕かれた。現在進行中の内戦では、外国勢力がそれぞれの陣営を支援し、国民は暴力と貧困の狭間で苦しんでいる。特に、金の埋蔵量を背景にしたRSFの行動は、天然資源がどのようにして暴力の資源となり得るかを物語っている。

ジジェクが描く未来と変化の可能性

ジジェクの警告は、現代社会が抱える矛盾と挑戦に対する批評だけにとどまらない。彼は、未来に対する悲観的な見通しを語りつつも、変化の可能性を探ることを忘れない。彼の提案する「穏健保守派コミュニスト」という立場は、ラカン派精神分析から量子力学に至るまでの多彩な視点を融合し、資本主義の限界を超えた新しい社会モデルを模索する試みだ。

ジジェクは、若者に対する再教育を求める習近平の発言を引き合いに出し、伝統的な価値観に基づく権威主義の危険性を指摘する。彼の視点は、単なる批判に終わらず、社会の進歩と変革に向けた対話を促すものである。彼の思索は、われわれが直面する問題に対し、どのようにして持続可能な解決策を見出すかという問いを投げかける。

ジジェクの哲学は、単なる知的なアクロバットではない。それは、現代の複雑な政治と社会の問題に対する深い洞察を提供し、読者に考えをめぐらせる機会を与えるものだ。彼の著作や発言は、時に挑発的でありながらも、我々が直面する課題に対する新しい視点を提供し、思索を深める手助けをしてくれる。

ジジェクのような哲学者の存在は、社会が進むべき道を考える上で重要な役割を果たす。彼の警告や提案を踏まえ、われわれは未来のためにどのような選択をするべきかを再考する必要がある。それは、単なる知識の探求ではなく、より良い社会を築くための行動につながるものだ。

[伊藤 彩花]