経済
2024年12月03日 01時30分

中上貴晶、MotoGPキャリア15年を振り返る:頂点の景色と未来への展望

中上貴晶選手、MotoGPの旅路を振り返る:頂点の景色とその先に見たもの

2024年シーズンの最終戦「ソリダリティGP・オブ・バルセロナ」は、LCRホンダ・イデミツの中上貴晶選手にとって、フル参戦選手としてのキャリアを締めくくる特別なレースとなった。中上選手は、15シーズンという長いキャリアを振り返り、その中で見た光景や感じた感情について語った。

ジェットコースターのようなキャリア

32歳の中上選手は、4歳から始まったレース人生を「ジェットコースターのよう」と表現する。その言葉の通り、彼のキャリアはアップダウンに満ちていた。世界選手権への最初の挑戦では、結果を残せず日本に戻ることを余儀なくされたが、全日本ロードレース選手権での成功を糧に、再び世界の舞台へと復帰した。

「諦めたくなかった」と語る中上選手は、2度目のチャンスを自らの手で掴みとり、Moto2クラスでの初優勝という目標を達成した。何度もどん底を経験しながらも、彼は常に這い上がり続けた。その姿勢は、まさに不屈の精神を体現している。

2020年の輝かしい瞬間とその影

中上選手がMotoGPクラスで特に印象的だったシーズンとして挙げたのは、2020年のことだ。この年、彼は自己ベストリザルトの4位を2度獲得し、日本人ライダーとして16年ぶりにポールポジションも手にした。それは、彼のキャリアにおける輝かしい瞬間だった。

しかし、その裏には多くの苦労があった。近年のホンダの苦戦は、中上選手にとっても大きな試練であり、モチベーションの維持に苦労する時期もあったという。それでも、彼は家族やチームの支えを受けて、その困難を乗り越えてきた。

プレッシャーを笑い飛ばす余裕

2018年、最高峰クラスにステップアップした中上選手は、日本人唯一のライダーとして、多くの期待を背負っていた。しかし、彼は意外にも「プレッシャーは感じていない」と明るく答える。その理由は、彼が常に目の前のレースに集中し、自分のパフォーマンスを最大限に引き出すことに専念していたからだ。

「自分が日本代表として走っている、ということを考える時間は無かったです」と語る中上選手。彼にとっては、結果を出すための準備が何よりも重要であり、そのためにチームと密にコミュニケーションをとり続けてきた。

世界の頂点に立つ者への敬意

中上選手が一番印象的だったのは、同じホンダのマルク・マルケス選手についての言葉だ。彼は「この人には敵わない」と率直に言い切る。マルケス選手の持つ技術、メンタル、そして天性のセンサーは、他のライダーを圧倒するものだと感じたという。

中上選手は、世界の頂点に立つ者たちの特別な才能を目の当たりにし、「僕は世界一にはなれない」と感じた。しかし、それはネガティブな感情ではなく、むしろ彼が成し遂げてきたことを誇りに思う気持ちだった。

彼は自らを「トップ10には入っている」と評価し、MotoGPという舞台で得た経験を糧に、未来を見据えている。中上選手が見た「頂点の頂点」の景色は、彼にとってかけがえのないものであり、その経験を次のステージへと繋げていく。

中上選手は、レースへの情熱を持ち続け、2025年シーズンにはワイルドカードとして再びMotoGPの舞台に立つ予定だ。その姿を再び見ることができる日は、彼のファンにとっても待ち遠しいものである。彼がどのような新たな景色を見せてくれるのか、期待が高まるばかりだ。

[鈴木 美咲]