経済
2024年12月03日 16時11分

「テクノロジーが変える医療現場!ナースコール進化の裏側」

テクノロジーの進化がもたらす医療現場の変革

夜も昼も、看護師たちの耳をつんざくように鳴り続けるナースコール。その背後には、現代医療の複雑な構造が潜んでいます。ナースコールシステムは、単なる呼び出し装置から、病院全体の情報システムへと進化を遂げています。しかし、看護師たちの負担は減るどころか、増す一方です。技術の進化がもたらす可能性と、現実とのギャップについて掘り下げてみましょう。

ナースコールの進化:便利さの裏に潜む課題

ナースコールシステムは、かつては単純なボタンとスピーカーの組み合わせでしたが、今やスマートフォンやIoT技術と連携し、患者の状態を多角的に把握できるようになっています。たとえば、転倒を検知するセンサーや、膀胱の状態を検知するセンサーなど、さまざまなデバイスが導入され、患者が直接コールボタンを押さなくても、必要に応じたケアが可能になっています。

しかし、これらの機能が増えれば増えるほど、看護師に届くコールの数も増加します。患者が簡単にナースコールを発信できるようになったことで、夜中に頻繁に呼び出されることも珍しくありません。まるで「百鬼夜行」ならぬ「百呼夜行」のような状態が、看護師たちをさらなる過重労働に追い込んでいるのです。

医師の働き方改革とタスクシフトの影響

2024年4月に施行された医師の働き方改革は、医師の労働時間を厳しく制限し、時間外労働の規制を強化しました。この背景には、医師の過労を防ぎ、医療の質を向上させる目的があります。しかし、医師の業務量を減らすための「タスクシフト」が、看護師へと大きな負担を転嫁しています。

看護師は専門的な知識と技能を持ち、患者ケアに対する強い責任感を抱えていますが、看護助手や事務職への業務移行はなかなか進んでいません。看護師の業務が看護助手に移行しない理由は、法的な制約により医療行為の範囲が限定されていることも一因です。このため、看護師たちは医師の業務を肩代わりすることになり、過重労働が深刻化しています。

データ活用の途上にあるナースコールシステム

ナースコールシステムには、誰がいつコールを発信したか、どのように対応したかといった詳細なデータが記録されています。しかし、そのデータをどう活用するかは、まだまだ課題です。分析によって看護業務の改善が期待される一方、現場ではデータが蓄積されるだけで、十分に活用されていないケースも多いのです。

たとえば、特定の時間帯にコールが集中した場合、その原因を分析し、看護体制を見直すことが可能です。しかし、現状ではデータの手入力が必要で、実際には入力が行われず、貴重なデータが埋もれてしまうことも少なくありません。こうしたデータ活用の不足が、看護師の負担を軽減するための大きな壁となっています。

未来のナースコール:脳波や視線での新しい可能性

未来のナースコールシステムには、患者が自ら動作しなくても発信できる技術が登場しつつあります。たとえば、ALS患者のように身体を動かせない方でも、脳波を用いてナースコールを発信する技術が研究されています。視線や瞬きを利用したコール発信も、コンピュータ入力の補助技術として既に存在し、医療現場での応用が期待されます。

また、カメラと画像解析技術の進化により、患者の動きを監視し、異常を検知した場合に自動でアラームを発信するシステムも普及しつつあります。これにより、患者の安全性が向上し、看護師は必要なケアに集中できる環境が整います。

ナースコールシステムの制御部分の進化

シンプルな呼び出し機能から、複雑なコンピュータ制御へと進化したナースコールシステムは、医用テレメータや薬剤管理システムと連携し、患者の状態をリアルタイムで把握できるようになっています。この連携により、看護師の業務が効率化され、医療の質が向上します。

日常の情報入力や申し送りも一つのサーバに集約されることで、情報共有が効率化され、看護師は患者ケアに集中しやすくなります。このように、ナースコールシステムが進化することで、医療機器との連携が強化され、現場の効率化と安全性が向上するのです。

[松本 亮太]