経済
2024年12月04日 07時32分

トヨタ「セラ」:ガルウィングで魅了するバブル時代の夢カー

トヨタ「セラ」:バブル時代の夢を乗せたガルウィング・マイクロスーパーカー

この小型車は、ガルウィングドアを採用したことで、超高級スポーツカーに匹敵する存在感を放ちました。トヨタ「セラ」は、ただの大衆車ではなく、まるで未来から現れたかのようなユニークなデザインと、細部にわたるこだわりで、今もなお多くの自動車ファンを魅了しています。

ガルウィングドアの魅力と利便性

「ガルウィング」という言葉は、もともとメルセデスベンツやランボルギーニといった、スーパーカーに採用される華やかなドアデザインを指します。セラは、これを大衆車に取り入れたことで、非常にユニークな存在となりました。ドアは真上に開くため、狭い駐車場でも乗り降りしやすい設計がなされています。また、ガラス製のドアは、光を取り入れることで開放的なキャビンを演出し、まるでライトプレーンのキャノピーを思わせるデザインです。

セラのガルウィングドアは、実用性も兼ね備えていました。気温の変化に関わらず、一定の力で開閉できる「ドア操作力温度補償ステー」が組み込まれ、快適な乗り心地を提供しました。このような技術は、まさにトヨタ品質を象徴しています。

セラのデザインと技術的進化

トヨタ「セラ」は、1987年に東京モーターショーで発表されたコンセプトカー「AXV-II」を基に開発されました。このコンセプトカーに対する反響は大きく、セラとして市販化されることとなります。スーパーカー並みのデザイン要素を持ちながらも、価格は160万円からという、当時としては驚くほどリーズナブルな設定でした。

セラは、スターレットのプラットフォームを利用しつつ、排気量を1.5Lに拡大したエンジンを搭載。また、専用にチューニングされた足回りや、ABS装着車にはリアディスクブレーキが採用されるなど、走行性能の向上にも努められました。さらに、アルミホイールや専用タイヤ「NAGI」を装着するなど、細部にまでこだわった設計が施されていました。

内装もまた、独自の美学が貫かれていました。スターレットとは一線を画すインパネやメーターのデザイン、ビオラフォルムシートと呼ばれる形状のシートなど、セラは自動車の内装までも芸術作品のように仕立てられていました。

セラ・アムラックス:幻の特別仕様車

セラの中でも特にレアな存在が、アムラックス限定仕様車です。池袋にあったトヨタのショールーム「アムラックス」が企画したこの限定車は、特別な内外装を持ち、わずか20台しか販売されませんでした。中学生の頃からセラに憧れ続けた水口さんは、30台以上のセラを乗り継ぎ、この幻のアムラックス仕様を10年かけてフルレストアしました。

水口さんの情熱は、少年時代に受けたセラへの衝撃から始まりました。免許を取得する前から純正パーツを集め、初めての愛車として選んだのもセラでした。彼のセラへの愛は一途で、30台を超えるセラのカスタムやレストアを通じて、セラの持つ唯一無二の魅力を追求し続けています。彼の現在の愛車であるアムラックス仕様は、オリジナルにこだわり、純正パーツを駆使して当時の姿を蘇らせています。

トヨタ「セラ」は、バブル時代の日本が生み出した夢のような車でした。その斬新なデザインと技術は、今もなお多くの自動車ファンに語り継がれ、愛され続けています。セラは、単なる過去の遺産ではなく、時代を超えて人々にインスピレーションを与える存在として、これからも輝き続けることでしょう。

[山本 菜々子]