科学
2024年11月24日 06時56分

小惑星リュウグウの塩の結晶が示す太陽系初期の水の謎

小惑星リュウグウの砂から見つかった塩の結晶が示す太陽系の水の謎

宇宙探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの試料から、驚くべき発見がなされた。京都大学や東北大学を中心とする研究チームは、リュウグウの砂の中に微小な塩の結晶を発見し、その成果を国際学術誌ネイチャーアストロノミーに発表した。この発見は、太陽系初期の水の存在とその進化を解明する上で重要な手がかりを提供するものだ。

リュウグウからの発見:塩の結晶の意義

研究チームは、電子顕微鏡を用いてリュウグウの砂を観察し、最大で長さ約500マイクロメートルの塩の結晶を発見した。この結晶は、岩塩、ナトリウム炭酸塩、ナトリウム硫酸塩で構成されていた。これらの塩の結晶は、通常、塩水の蒸発や凍結によって形成されるため、リュウグウの母天体には過去に大量の塩水が存在していたと推測される。特に興味深いのは、これらの結晶が火星と木星の間にある準惑星セレスや、土星の衛星エンセラダスの地下に存在する海水の塩分と似ている点である。これにより、太陽系内での水の存在とその進化に関する新たな視点が提供される。

隕石の起源と小惑星族の関係

一方で、地球に落下する隕石の起源に関する新たな研究も進展している。フランス国立科学研究センター(CNRS)や欧州南天天文台(ESO)などの国際チームが行った研究によれば、地球上で見つかった隕石の70%が、カリン族、コロニス族、マッサリア族という3つの若い小惑星族に由来することが明らかになった。この発見は、隕石の起源を解明するだけでなく、太陽系の進化における小惑星の役割を再評価する契機となるだろう。

リュウグウとベヌー、小惑星の共通起源

「はやぶさ2」がサンプルを採取したリュウグウと、NASAの「OSIRIS-REx」が訪れた小惑星ベヌーは、いずれも内側小惑星帯に共通の起源を持つことが明らかになっている。これらの小惑星は、将来的に地球に衝突するリスクを持つ「惑星キラー」としても注目されているが、それ以上に、太陽系の形成と進化の過程を理解する上で重要な情報をもたらす可能性がある。

研究者たちは、これらの小惑星の成り立ちと進化を解明することで、地球と他の惑星の形成過程をより深く理解しようとしている。特に、リュウグウやベヌーが示す有機物の存在は、生命の起源を探る上で重要な手がかりとなるだろう。

太陽系初期の水の謎と今後の展望

リュウグウの塩の結晶の発見は、太陽系初期における水の存在を示す貴重な証拠である。この発見は、太陽系内での水の分布やその進化、さらには生命の起源にまで影響を及ぼす可能性がある。将来的には、より多くの小惑星や惑星の探査が進むことで、太陽系における水と有機物の関係がさらに明らかになるだろう。

宇宙探査は、私たちが住む地球の起源を知る手がかりを提供するとともに、他の惑星での生命の可能性を探るための鍵でもある。リュウグウのような小惑星からのサンプルがもたらす新たな知見は、科学者たちにとって大きな刺激となり、次なる探査ミッションへの期待を高めている。

[松本 亮太]