経済
2024年12月05日 22時30分

冷えた海水で育つ!東邦ガスの「知多クールサーモン」プロジェクトが話題に

冷えた海水が生む新たな命:東邦ガスのサーモン養殖プロジェクト

愛知県知多市にある東邦ガスの知多緑浜工場では、地球のエネルギー資源を少しでも無駄にしないための試みとして、液化天然ガス(LNG)の気化過程で生じる冷えた海水を活用したサーモンの養殖が始まっています。このプロジェクトは、単なるガス会社という枠を超え、新たな可能性を模索する東邦ガスの野心的な挑戦です。

冷えた海水の有効活用:目からウロコのアイデア

LNGは、天然ガスを-162℃という極低温で液化し、体積を大幅に減少させて輸送する技術です。しかし、都市ガスとして使用する際には再び気体に戻す必要があり、その過程で海水を用いて温められます。このとき使用される海水の温度は2~4℃まで下がります。東邦ガスは、この冷えた海水を「無駄にしない」という発想のもとに、低温での成育が求められるサーモンの養殖に活用することを考え出しました。

サーモンは水温が20℃を超えると成育が難しくなるため、冷えた海水は彼らにとって理想的な環境を提供します。このアイデアは、まるで冷蔵庫の中のアイスクリームが溶けないように、サーモンを快適な環境で育てるための絶妙な仕組みです。

知多クールサーモンの誕生とその成長

2019年に始まったこのプロジェクトは、徐々に規模を拡大し、現在では約3万匹の稚魚が5つの大きな水槽で育てられています。「知多クールサーモン」と名付けられたこの新ブランドは、すでにその品質の良さで話題を呼んでいます。実証試験期間中に販売されたサーモンは、「脂のりがさっぱりしていて食べやすい」「おいしい」という声を多数集めました。

来年5月から6月にかけては、最大60トンものサーモンが出荷され、東海3県のスーパーなどで手に入る予定です。消費者に届くサーモンは、まるで知多市の冷たい海水の恩恵を受けたかのような、フレッシュな味わいを提供することでしょう。

持続可能性と地域活性化への貢献

この取り組みは、サーモンの需要が底堅いことからも、地域に新たな産業を創出する可能性を秘めています。さらに、こうした養殖プロジェクトは、地元の雇用を生み出し、地域社会に新たな活力をもたらすことでしょう。

未来への展望:ガス会社の新たな挑戦

東邦ガスのこのプロジェクトは、ガス会社が持つ技術を利用した異業種への挑戦として、他の企業にも大きなインスピレーションを与える可能性があります。環境問題がますます深刻化する中で、こうした資源の有効活用は、企業が持続可能な社会貢献を果たすための新しいモデルとなり得るでしょう。まるで、冷たい海水が新たな命を育むように、このプロジェクトが地域と企業の未来を育むことを期待したいものです。

東邦ガスが生み出す「知多クールサーモン」の物語は、単なる養殖の成功だけでなく、持続可能な未来を切り開くためのヒントとして、多くの人々に影響を与えることでしょう。冷えた海水の中で育つサーモンのように、このプロジェクトもまた、冷静な判断と熱い情熱の中で次第にその姿を明らかにしています。

[伊藤 彩花]

タグ
#サステナビリティ
#地域活性化
#知多クールサーモン