国際
2024年12月07日 09時40分

韓国の尹錫悦大統領、弾劾と非常戒厳がもたらす政治的波乱!

韓国の政局に新たな波乱:尹錫悦大統領の弾劾と非常戒厳の影響

韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を巡る政治的緊張が、国民を巻き込みながら一段と高まっています。7日には、尹大統領の弾劾訴追案が国会で採決される見通しですが、その背景には非常戒厳の発令と解除を巡る一連の動きがあります。この状況を俯瞰すると、韓国の政治史において繰り返される権力と市民の攻防が浮かび上がります。

非常戒厳宣言がもたらした混乱

非常戒厳の発令は、韓国の政治舞台において長らく影を落としてきた過去の戒厳令と似た状況を想起させます。尹大統領が3日に非常戒厳を宣布し、翌4日には軍が国会に進入。この事態は、1980年代に全斗煥(チョン・ドゥファン)政権が非常戒厳を利用して権力を集中させた出来事とオーバーラップします。全斗煥のケースでは、最高裁が内乱罪を認めた判例があり、今回も尹大統領の行動が内乱罪に問われる可能性が浮上しています。

歴史は繰り返すと言いますが、韓国の政界はその教訓をまだ十分に活かし切れていないのかもしれません。非常戒厳は国家の危機に際して用いられるべきものですが、権力維持のために利用された過去を持つだけに、その使用には特に慎重さが求められます。

弾劾への道筋と政治的駆け引き

尹大統領の弾劾訴追案は、国会議員300人のうち3分の2の賛成が必要です。野党議員192人に加え、与党から8人以上が賛成すれば可決され、尹大統領は職務停止となります。与党内部でも意見が割れる中、尹大統領自身も国民に向けた談話を発表する可能性が取り沙汰されています。謝罪の有無も含め、その内容がどのように国民や議員に受け取られるかが、今後の弾劾の行方を左右するでしょう。

尹大統領の支持基盤である「国民の力」内でも、非常戒厳の正当性を巡る意見は分かれています。これにより、与党内でどれだけの支持を確保できるかが鍵となります。つまり、弾劾は単なる議会の手続きではなく、尹政権の今後を左右する運命の分かれ道なのです。

戒厳内乱としての法的評価

尹大統領の行動が内乱罪に該当するかどうかの議論は、法曹界でも活発に行われています。韓国刑法第87条は、国家権力を排除する目的で暴動を起こした者を処罰すると規定しています。この条項は、国民の基本権を制約するような非常戒厳の布告が内乱罪に該当し得ることを示しています。

過去の判例では、全斗煥政権による非常戒厳の全国拡大が内乱罪として認定されました。尹大統領のケースでも、国会議事堂への軍の進入や主要政治家の逮捕指示などが、同様の法的基準で裁かれる可能性があります。非常戒厳が一時的な封鎖や統制であっても、その行為が憲法機関の不能化に繋がる場合、内乱罪の成立が問われることになります。

歴史の教訓と市民社会の反応

韓国の市民社会は、こうした権力による非常手段の行使に対して非常に敏感です。市民運動は1980年代の民主化運動から続く長い歴史を持ち、権力の独走を防ぐための監視役を果たしています。今回の非常戒厳宣言に対しても、社会的な反発が予想されます。

市民の目は、単に弾劾の行方を見守るだけでなく、民主主義の基盤を揺るがす行為に対する防波堤としての役割を担っています。尹大統領がどのような談話を発表し、どのように国民の信頼を再構築するかが、韓国の未来を左右する鍵となるでしょう。

韓国の政治は、まさにダイナミックで波乱に満ちています。歴史的な背景を考慮すると、この状況は単なる一時的な混乱ではなく、民主主義国家としての成熟過程の一部なのかもしれません。市民と政治家がどのようにこの難局を乗り越えるか、その答えはまだ誰にも分かりません。

[山本 菜々子]

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