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2024年12月11日 07時40分

ノーベル平和賞授賞式で被団協が核廃絶を訴える!田中煕巳さんのメッセージが響く

ノーベル平和賞受賞で被団協が訴える核廃絶の未来

オスロの冷たい冬空の下、ノーベル平和賞授賞式の華やかな舞台に、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表たちがその存在感を示しました。長崎の被爆者、田中煕巳さん(92)が壇上で語ったのは、核兵器の悲惨さを身をもって経験した人々の声でした。彼の訴えは、核の脅威が再び高まる現代において、より一層の重みを持っています。

田中さんが語った「核のタブー」が壊されつつあるという危機感は、ウクライナでのロシアの核威嚇や、中東での不安定な動きが背景にあります。核兵器はその存在自体が脅威であり、使用されれば即座に数百万の生命を奪う力を持っています。田中さんはそのことを身をもって知っているからこそ、言葉の一つ一つが重く響きます。

被団協の歴史と使命

被団協の運動は1956年に始まりました。それは、被爆者が自ら立ち上がり、核兵器の非人道性を訴え続けるという、前例のない挑戦でした。田中さんが語るように、日本政府の「戦争の被害は国民が受忍しなければならない」という主張に反対し、核兵器の廃絶を求める声を世界に届けることが目標でした。

1954年の第五福竜丸事件を契機に、日本国内でも原水爆反対の機運が高まりました。そして、被団協はその運動の中心として活動し、核兵器禁止条約の採択(2017年)にも大きく貢献しました。田中さんの講演で示された「核兵器は一発たりとも持ってはいけない」というメッセージは、被爆者たちが長年伝え続けてきた願いそのものです。

未来へのバトン

しかし、被爆者の平均年齢は85歳を超え、直接の証言者が少なくなる中で、次の世代へのバトンの受け渡しが急務となっています。田中さんは講演で、「私たちがやってきた運動を、次の世代の皆さんが、工夫して築いていくことを期待しています」と呼びかけました。これは単なる願いではなく、未来の平和を守るための具体的な行動を求める声です。

被団協が国連に提出した1370万を超える署名や、核兵器禁止条約の制定に向けた努力は、決して過去の成果に留まるものではありません。これらは、核兵器の非人道性を広め、核政策を変える力になることを期待されています。被爆者の証言が感性に訴える力を持ち、世界中の市民が核兵器のない世界を求める声を上げ続けることが重要です。

核兵器廃絶に向けた国際的な連携

田中さんが強調したように、核兵器の廃絶は一国のみで達成できるものではありません。国際社会が連携し、核兵器の脅威に立ち向かう必要があります。ノーベル賞委員会も、被団協の努力が核のタブーの確立に貢献したと評価していますが、それはまだ道半ばの成果に過ぎません。

核兵器廃絶のためには、核保有国とその同盟国の市民が核政策を変える力を持つことが重要です。田中さんが講演で述べたように、「皆さんがいつ被害者になってもおかしくない。加害者になるかもしれない」という当事者意識を持つことが求められています。

授賞式の会場でスタンディングオベーションを受けた田中さんの言葉は、単なる感動の瞬間を超えて、核兵器廃絶のための行動を呼びかけるものでした。核兵器も戦争もない世界を求めて、今後も続くこの運動に、次の世代がどのように参加していくのかが問われています。

[山本 菜々子]

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