経済
2024年12月11日 14時11分

電子部品業界の未来:AIと中国市場の狭間での挑戦

電子部品業界の新潮流:AIと中国の狭間で

電子部品業界の動向は、今やAIと中国という二大勢力の影響を強く受けています。生成AIがもたらす新たなニーズに応えようと、村田製作所や山一電機といった企業は、AIサーバー向けの技術開発を急ピッチで進めています。同時に、中国市場への依存度が高い企業は、現地の経済低迷がもたらすリスクに直面しつつも、特定分野への戦略投資の恩恵を狙っています。

AI市場の急成長がもたらす変革

AIの進化は、もはや未来の話ではありません。富士キメラ総研によると、AI関連市場は2028年度までに国内で12倍以上に成長すると予測されています。AIサーバーの需要は高まる一方で、データセンター(DC)の光通信モジュールの高速化が求められています。山一電機が開発した毎秒1.6テラビットのコネクターや、日本電波工業の水晶デバイスなどは、このトレンドに応える製品です。

しかし、AIサーバーの市場はまだ限定的で、全体のサーバー市場に占める割合はわずか12.2%に過ぎません。まさに「限られたパイをいかに分け合うか」が業界の課題です。村田製作所の中島規巨社長が「もっと早く対応できなかったのか」と悔しさをにじませるのも無理はありません。彼の言葉には、リソースのシフトが遅れたことへの反省が見て取れます。

冷却技術の重要性と新たな挑戦

AIサーバーは計算能力が高い分、発熱の問題が避けられません。そのため、冷却技術の開発も急務です。ニデックは水冷モジュールを投入し、発熱対策を強化しています。また、日本ケミコンは液浸冷却方式に対応したアルミ電解コンデンサーを開発。冷却技術が進化する中で、AIサーバーの信頼性と性能がさらに向上することが期待されます。

中国市場の二面性:リスクとチャンス

一方、中国市場は景気の低迷が続く中でも、特定分野への投資が続いています。特にEVや半導体、スマートフォン分野への投資は活発で、日産や資生堂のように中国市場で苦戦している企業がある一方で、ブイ・テクノロジーやTDKのように中国からの売上比率が高く、恩恵を受ける可能性のある企業も存在します。

しかし、中国市場への依存度が高い企業は、地政学的リスクを無視できません。アメリカの対中半導体規制が強まる中、これらの企業は戦略的にリスクを管理する必要があります。それでも、中国は半導体分野への投資を続けており、村田製作所やフェローテックHDはその恩恵を受けるポジションに立っています。

未来を見据えた電子部品業界の挑戦

電子部品業界は、AIと中国市場という両方の潮流をうまく捉えることが求められています。村田製作所の中期方針が示すように、AI関連部品の開発に注力することで、将来の市場拡大を見込んでいます。積層セラミックコンデンサー(MLCC)の生産能力を増強し、データセンター向けの新たな電子部品を展開することも計画しています。

このように、電子部品業界はAI市場の成長と中国市場の動向という二つの大きな波に乗ろうとしています。業界が直面する課題は多いものの、それぞれの企業が持つ技術力と戦略が、今後の成長を支える鍵となるでしょう。どちらの市場も、リスクとチャンスが交錯する中で、真のイノベーションが生まれる可能性を秘めています。

[鈴木 美咲]

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