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2024年11月24日 22時16分

NVIDIAのAI戦略とソフトバンクとの提携:未来を切り拓く技術革新

NVIDIAのAIビジョン:未来を切り拓く推論とインフラ構築

NVIDIAの共同創業者でありCEOのジェンスン・フアン氏は、AIトレーニング市場でのリーダーシップを確固たるものにしている。彼の最新の発言からは、今後のAI推論が企業経営にどれほど大きな影響を及ぼすかが垣間見える。フアン氏は、ウォール街のアナリストたちとの会話の中で、Googleの「NotebookLM」を例に挙げ、AI推論の未来についての期待を語った。NotebookLMは、AIが文書を理解し、要約し、さらには対話形式で応答を行うことを可能にするツールである。このツールは、フアン氏自身が日常的に活用しているものであり、AI推論の実用性を示す好例として挙げられる。

フアン氏はAIの推論能力が、企業の多くの部門に浸透する未来を描いている。マーケティング、サプライチェーン、法務、エンジニアリング、コーディングなど、あらゆる業務プロセスにおいてAIがそれぞれの部門の効率性と生産性を向上させることを期待している。特に「物理AI」としての活用が挙げられ、物理世界の構造を理解し、短期的な未来を予測する能力を持つAIモデルの開発に注力している。このようなAIの進化は、企業が競争優位を保つための重要な要素となり得る。

ソフトバンクとNVIDIAの戦略的提携:AI-RANの可能性

NVIDIAとソフトバンクの協力関係は、AIと通信インフラの融合に新たな可能性をもたらしている。ソフトバンクが開発中の「AI-RAN」は、全国の基地局にGPUを搭載し、AI処理と無線アクセスシステム(RAN)を同時に展開することを目指している。この技術は、日中のトラフィックが多い時間帯にはRAN処理を優先し、トラフィックが減少する夜間にはAI処理を行うことで、効率的な利用を可能にする。

ソフトバンクは、この技術によって基地局を「儲かる」設備に変えることを目指している。AI-RANの導入により、設備投資に対する利用効率が向上し、ROI(投資利益率)が大幅に改善することが期待されている。この技術はすでにT-MobileやSKテレコムといった世界のキャリアとのアライアンスを形成しており、2026年以降には海外展開も視野に入れている。

フアン氏は、AI-RANを世界に広げるためには強力なリーダーシップが必要であると述べ、日本におけるソフトバンクの先見性を高く評価している。ソフトバンクは国内20万の基地局をAI-RANに移行する計画を持ち、この技術が日本の通信インフラに革命をもたらすことを目指している。

AI GPU市場の競争:NVIDIAとAMDの攻防

AI用GPU市場ではNVIDIAが圧倒的なシェアを誇っているが、競争は激化している。GPU業界2番手のAMDは、AI用チップ開発に遅れを取っていることから、約1000人の人員削減を行い、リソースをAIに集中させる方針を打ち出した。AMDは、NVIDIAのシェアに追いつくために、XilinxやNod.ai、ZT Systemsといった企業を買収し、AI技術の強化を図っている。

NVIDIAは、AI推論の分野でのリーダーシップを維持し続けるために、新しいGPUアーキテクチャ「Blackwell」を発表し、GPUチップの販売を拡大しようとしている。AI推論がビジネスの成長エンジンとなることを確信しており、それに向けたサプライチェーンの強化にも注力している。

一方で、AIチップ市場はまだ拡大の余地があり、AMDや新興勢力がどのようにこの市場に食い込んでいくかが注目される。AI技術の進化と共に、企業間の競争はさらに激化することが予想されるが、その過程で新たなイノベーションが生まれることを期待したい。

[佐藤 健一]