経済
2024年11月24日 21時33分

トランプ次期政権、スコット・ベッセント氏を財務長官に指名:米国第一主義の新たな布陣

トランプ政権の人事と政策:米国の未来を左右する布陣

2024年11月22日、トランプ次期米大統領はスコット・ベッセント氏を財務長官に指名。この動きは、トランプ政権が掲げる「米国第一主義」に沿ったイエスマンによる人事の一環とされ、多くの議論を呼んでいる。ベッセント氏はジョージ・ソロス氏のファンドで最高投資責任者を務めた経歴を持ち、トランプ氏の経済政策の指南役としても知られる。彼の指名は、トランプ政権がウォール街との関係を強化しつつ、保護貿易主義を推進する姿勢を示している。

スコット・ベッセント氏の財務長官指名の背景と影響

スコット・ベッセント氏は、トランプ氏の経済政策である規制緩和や減税を推進する重要な役割を担う。彼は当初、トランプ氏の一律追加関税策に慎重な姿勢を示していたが、最終的には支持に転じた。この政策は、国内産業の保護を目的としているが、物価上昇を招くリスクがあるとされ、ウォール街では懸念が広がっている。しかし、ベッセント氏の金融業界での経験と人脈は、トランプ政権とウォール街の橋渡し役として期待されている。

ベッセント氏はまた、対米外国投資委員会(CFIUS)のトップに就任する見込みで、日本製鉄によるUSスチール買収計画の審査を行うことが予測される。この人事は、米国が外国資本に対してより厳しい姿勢を取る可能性を示唆しており、貿易政策の一環としても注目される。

イーロン・マスク氏の影響と人事の難航

財務長官人事における最大の障害は、イーロン・マスク氏の影響力だった。彼が支持していたハワード・ラトニック氏が商務長官に指名されたことで、ベッセント氏への道が開かれた。ラトニック氏は、商務長官の権限を拡大し、米通商代表部(USTR)をも所管するように調整された。この結果、貿易政策で大きな影響力を持つUSTR代表の位置づけが変更され、トランプ政権の政策遂行における新たな課題が浮き彫りになった。

さらに、トランプ氏は、USTR代表にロバート・ライトハイザー氏を再任させることを試みたが、より高いポストを求めて辞退された。これにより、トランプ政権の保護貿易主義政策の行方が不透明になり、経済政策の推進において不安定要素が増している。

分断する米国社会と経済政策の行方

2024年の米大統領選では、トランプ氏が勝利を収めたが、米国社会の分断は深まるばかりだ。特に、労働者層がトランプ氏を支持した背景には、物価高や経済的不安がある。トランプ政権の政策がこの層にどのように影響を及ぼすかは、今後の米国経済の行方を左右する重要な要素だ。

経済学者アダム・スミスが唱えた「共感(シンパシー)」の重要性が再び注目されている。分断を解消するためには、他者への共感を促進することが求められている。現代の主流派経済学が利己的なホモエコノミクスに基づいているため、分断を加速させてきたとの批判もある。経済政策が社会のニーズに応えるためには、失われた人間らしさや他者との関係を取り戻すことが不可欠だ。

NATOとの会談と国際的な安全保障問題

トランプ氏はNATOのルッテ事務総長と会談を行い、ウクライナ支援を巡る懸念に対する意見交換を行った。トランプ氏はウクライナ支援に懐疑的な姿勢を示し、戦争の迅速な終結を目指す意向を表明している。一方、ルッテ氏はウクライナの立場を重視し、和平合意が同国に受け入れ可能な条件であるべきだと主張している。

この会談は、トランプ政権の外交政策が国際社会に与える影響を予測する上で重要な指標となる。トランプ氏の「米国第一主義」が国際協調をどのように変えるのか、そしてそれが世界の安全保障にどのような影響を及ぼすのかが注目されている。

以上のように、トランプ次期政権の人事と政策は、国内外で多くの波紋を呼んでいる。ベッセント氏の財務長官指名をはじめとする一連の人事が、米国経済や国際関係にどのような影響をもたらすのか、今後の展開が非常に注目される。

[高橋 悠真]