国際
2024年12月14日 12時50分

韓国政治の劇場化:尹錫悦大統領の弾劾案が再び審議へ

韓国政治の岐路:尹錫悦大統領の弾劾案とその行方

韓国の政治舞台は、まるで劇場のような緊迫した状況に包まれています。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案が議会で再び審議されることとなり、国は再び分裂しています。与党「国民の力」は内部分裂の危機に瀕し、野党は弾劾を支持する勢いを強めています。賛成派と反対派の間で激しい駆け引きが続く中、韓国の未来はどのように形作られるのでしょうか。

尹錫悦大統領の「非常戒厳」:引き金となった決断

尹大統領が「非常戒厳」を発動したことが、今回の弾劾案の引き金となりました。戒厳令は通常、国家の安全保障に重大な脅威があると判断された場合に発動されますが、平和な時期にこのような措置が取られることは極めて異例です。多くの国民はこれを民主主義に対する脅威と捉え、尹大統領の手法に対して強い反発を示しています。

世論調査によれば、尹大統領の支持率はわずか11%で、不支持率は85%に達しています。弾劾に賛成する国民も75%に上り、尹大統領に対する信頼は急落しています。これに対し、尹大統領を支持する人々もまだ存在し、「戒厳令は正当な統治行為だ」と主張しています。

与党内の亀裂と野党の戦略

与党「国民の力」は、尹大統領への支持を巡って分裂の危機に直面しています。党内では尹大統領に近い議員たちが弾劾に反対している一方で、別の派閥は賛成に転じようとしています。党の方針を巡る議論は続いており、党内の統一を図ることは容易ではありません。新たに選出された権性東(クォン・ソンドン)院内代表は弾劾反対を党方針として掲げていますが、党内の3分の2以上の同意を得ることが求められています。

一方、野党は弾劾案の可決に向けた戦略を練っています。最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、与党議員に賛成票を投じるよう呼びかけ、「弾劾だけが混乱を終わらせる最も早くて確実な方法だ」と主張しています。与党からの造反者が8人に達すれば、弾劾案は可決される見込みです。

街頭での激しい対立:国民の声と警察の対応

政治的な緊張は、街頭にも波及しています。ソウルでは、弾劾賛成派が大規模な集会を開催し、「大統領を弾劾せよ」「尹錫悦を逮捕しろ」と声高に叫びます。一方で、尹大統領を支持する人々も大統領府近くに集まり、「尹大統領、頑張ってください!」と花輪を並べて応援の意を示しています。警察は20万人が集まると予想されるため、群衆事故を防ぐために厳重な警備を敷いています。

街頭での対立は、単なる政治的な主張の場ではなく、韓国社会における価値観や未来へのビジョンの違いを浮き彫りにしています。あるタクシー運転手は、「尹氏を支持していたが、戒厳令という軍事政権時代の手法を使ったのは先進国の大統領として恥ずかしい」と語り、政治的な失望を表明しています。

韓国政治の行方と国民の期待

尹錫悦大統領に対する弾劾案は、韓国の政治体制や民主主義の在り方を再考する機会となっています。この国がどの道を選ぶかは、国会の決定にかかっていますが、その背後には多くの国民の期待と不安が交錯しています。

[伊藤 彩花]

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