プーチン大統領の楽観とロシア兵の悲劇:ミートグラインダー戦術の現実
ウクライナ侵攻:プーチン大統領の楽観とロシア兵の悲劇
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、自らの軍事作戦を「画期的な年」と称し、ウクライナでの189の集落制圧を誇らしげに語る一方で、戦場の現実は彼の言葉とは大きく異なります。この物語は、戦場での勝利の代償として、ロシア兵の命がどれほど軽んじられているかを浮き彫りにします。
モスクワでの国防省会議で、プーチン大統領はロシア軍が「前線全体で主導権を握っている」と強調しました。彼はこの発言を通じて、国際社会に対してロシアの軍事的優位性をアピールする意図があったようです。しかし、ロシア軍の実態は、兵士たちの命を「使い捨てる」ような過酷な戦術に依存しているという指摘があります。
このような状況を最も象徴するのが、ロストフナドヌーというロシア南部の街です。ここは一見、静かな地方都市のように見えますが、実際には戦場で犠牲になったロシア兵の遺体が集まる場所として、悲劇の象徴となっています。ソーシャルメディアに流出した映像では、腐敗が進んだ遺体が廊下に放置され、棺が天井まで積み上げられている様子が映し出されています。これらの遺体はロシア兵の命がどれほど軽んじられているかを如実に物語っています。
戦場でのミートグラインダー戦術
ロシア軍は、戦場での「ミートグラインダー戦術」と呼ばれる戦略を用いています。これは、膨大な数の兵士を前線に送り込み、敵を疲弊させると同時に、その位置をあぶり出して攻撃するというものです。この戦術は、第二次世界大戦中の人海戦術を彷彿とさせます。2022年5月に始まったバフムートの戦いで、ロシアはこの戦術を採用し、1年間に2万人以上のワグネル傭兵を犠牲にして、廃墟と化したバフムートを制圧しました。
この戦術の背景には、ロシア政府の人命軽視があるとされています。ロシア政府は、戦場での犠牲者が増えることをさほど問題視していないようです。特に、非ロシア系の兵士が犠牲となるケースが多く、これがロシアの「優生政策」の一環であると指摘する声もあります。アレクサンドル・ボロダイ下院議員は、ウクライナ軍の弾薬を消耗させるために、大量のロシア兵を戦場に送り込むことで「社会的価値」の低い者たちを間引くことができると発言しています。
膨大な犠牲者と新たな戦略の模索
ロシア兵の死者数は11万5000~16万人と推定され、これはソ連が1970年代末にアフガニスタンに侵攻したときの10倍以上です。この犠牲者数の多さは、ロシア軍の兵士がどれほど人命を軽視されているかを示しています。新兵はろくな訓練も受けずに前線へ送られ、命を落とすという悪循環が続いています。
プーチン大統領は、欧米諸国がロシアを「レッドライン」に追い込んでいると非難し、米国が短・中距離ミサイルを配備すれば、自国のミサイル配備に関する自主規制を解除するとしています。これは、ロシアが新たな軍事戦略を模索していることを示唆しているのかもしれません。
一方で、ウクライナではロシア軍の兵士が次々と命を落としている現実が存在します。ロシア兵の命が軽んじられる一方で、ロシアの武器も失われています。10月だけで500を超える戦車や航空機が失われたとされ、ロシアの軍備は危機的な状況にあります。
[高橋 悠真]