国際
2024年12月17日 14時30分

韓国政治の劇的展開:尹錫悦大統領の非常戒厳と弾劾訴追

韓国の政治的激動:非常戒厳と尹大統領の弾劾劇

韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領をめぐる状況は、まるでスリラー映画のように緊迫したものとなっている。2023年12月、尹大統領が突如発令した非常戒厳は、1979年の朴正熙(パク・チョンヒ)大統領暗殺以来、45年ぶりの出来事であり、国を揺るがす大きな波紋を呼んでいる。戒厳の背後には、尹大統領自身の政治的な立場が大きく影響しているとされ、その背景には不正選挙陰謀論が絡んでいる。

この戒厳宣言は、北朝鮮に追従する勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守るという名目で行われたが、実際には尹大統領が自身の権力基盤を守るための手段だったのではないかと疑われている。戒厳司令部が発表した「布告令第1号」では、政治活動の禁止や言論統制が明示され、医療関係者には復帰命令が出された。これに対し、国会はすぐさま戒厳解除を要求し、議員らは国会本庁に集結。戒厳軍による進入は、市民の協力もあって阻止され、非常戒厳はわずか6時間で解除されることとなった。

弾劾の背景と進行

非常戒厳の混乱が収束したかに見えたが、尹大統領への弾劾の動きが加速する。尹大統領が戒厳を進言したとされる金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防部長官が緊急逮捕されると、尹大統領自身も内乱罪の被疑者として立件され、出国を禁止される事態となった。

国会では、与党「国民の力」内部で尹大統領に近い「親尹派」と、韓東勲(ハン・ドンフン)代表に近い「親韓派」が対立。最初の弾劾訴追案は定足数不足で廃案となったが、2回目の訴追案は可決され、尹大統領の権限は停止された。尹大統領は任期を含めた政局の安定策を与党に一任すると述べたが、この発言が逆に弾劾に賛成する世論を煽る結果となった。

不正選挙陰謀論とその虚構性

尹大統領が不正選挙陰謀論に傾倒していることも、今回の政治危機の一因である。不正選挙を根拠に非常戒厳を正当化しようとしたが、国軍防諜司令部内では「不正選挙論は根拠なし」という報告書が作成されていた。ヨ・インヒョン国軍防諜司令官が指示した報告書には、不正選挙を支持する証拠がないことが明確に示されており、法務室による検討でも違法性が認められたため、選管のサーバー奪取は実行されなかった。

不正選挙陰謀論を否定する報告書には、「裁判所の判断すら信じられないのに、無理な疑惑を提起し続ける集団の一方的な主張とは距離を置く必要がある」との指摘が含まれていた。このような状況下で、尹大統領がどのようにして非常戒厳を発令したのかは、未だに多くの謎を残している。

韓国政治の未来を占う

尹大統領の弾劾可決によって、韓国の政治は新たな局面を迎えた。非常戒厳の発令とその解除、さらには弾劾訴追案の可決は、韓国の民主主義の在り方を問う事態となった。特に、権力の乱用や陰謀論に基づく政策の推進がどれほど危険であるかを示す事例として、今後の政治に大きな影響を与えるだろう。

尹大統領は非常戒厳を通じて何を達成しようとしたのか、その真意は未だ明らかではない。しかし、この一連の出来事が韓国の政治に与えた衝撃は計り知れず、今後の政局にどのように影響するのか、注意深く見守る必要がある。尹大統領は弾劾によって職務を停止され、内乱容疑の捜査と憲法裁判所の弾劾審判を待つことになったが、彼の動向が国内外に与える影響は少なくない。

[伊藤 彩花]

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