科学
2024年12月18日 06時20分

NASAのジュノーが捉えた木星の衛星イオの神秘

NASAのジュノーと木星の魅惑的な世界

2023年12月30日、アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ジュノー」は、木星の衛星イオの壮大な姿を捉えることに成功しました。ジュノーの可視光カメラ「ジュノーカム」が撮影したこの画像は、木星のガリレオ衛星の一つであるイオの神秘的な地形を鮮明に映し出しています。NASAは2024年12月12日にこの画像を紹介しましたが、これはイオの昼と夜の境界線付近にある山々が低い太陽の光によって陰影が強調されるという、非常に貴重なタイミングでの撮影でした。

イオは、1610年にガリレオ・ガリレイによって発見された4つのガリレオ衛星のうちの一つで、木星に最も近い軌道を周回しています。この衛星は、特に活発な火山活動で知られており、地球外で最も活発な火山活動を持つ天体とされています。木星の強力な重力に引っ張られ、他の衛星との相互作用によって発生する潮汐加熱が、この火山活動の主な原因とされています。この現象は、別の天体の重力によって引き起こされる潮汐力によって天体の内部が変形し、加熱されるというものです。

ジュノーが捉えたイオの山々は、標高が3.7~9.8kmにも達し、その全体や一部が火山活動で噴出したガスから生じた二酸化硫黄の霜で覆われている可能性があります。このような地形の観察は、イオがどれだけダイナミックな環境であるかを示す一例に過ぎません。

ジュノーの旅とその使命

2011年に打ち上げられたジュノーは、2016年から木星の周回軌道を回り続けています。ジュノーのミッションは、木星の大気、磁場、そして内部構造に関する画期的な知見をもたらしました。2024年9月15日には、ジュノーは76回目のフライバイ中に木星の大気圏へと突入し、「死の急降下」を行う予定です。これは、ジュノーに付着した地球の微生物が木星の衛星エウロパに衝突し、環境を汚染するリスクを排除するための措置です。

ジュノーの運用終了後、木星探査は新たなミッションに引き継がれます。欧州宇宙機関(ESA)が主導する木星氷衛星探査計画「JUICE(ジュース)」と、NASAの「エウロパ・クリッパー」がその主役です。ジュースは2023年に打ち上げられ、2031年に木星系に到着する予定です。エウロパ・クリッパーは、2030年に木星に到達し、特にエウロパに重点を置いた探査を行います。

地球外生命の可能性

木星の衛星には、地球外生命が存在する可能性があるとされています。特に、ガリレオ衛星のうちエウロパ、ガニメデ、カリストは、地表が「氷殻」で覆われ、その下に広大な「内部海」が存在すると予想されています。もし生命が存在するとすれば、この内部海に生息している可能性があります。

このような生命の存在条件には、水、有機物、そしてエネルギーが必要です。潮汐加熱によって内部海が完全に凍らずに存在し続けていると考えられることは、この仮説を支持する要素の一つです。エウロパ・クリッパーの使命は、これらの条件がどれだけ整っているのかを探査することです。

一方、ジュースは、エウロパやカリストをフライバイし、2034年にはガニメデの周回軌道に投入される予定です。この探査は、遠隔的なリモートセンシングによるものであり、直接的に地球外生命を発見するものではありませんが、地球以外の天体に生命が存在する環境があるかどうかについての疑問を解明する一助となるでしょう。

NASAのジュノーから始まった木星探査の旅は、地球外生命の可能性を探るという壮大なミッションへと続いていきます。人類が宇宙の謎を解明するための一歩を踏み出す中で、木星とその衛星たちは、私たちに新たな驚きと発見をもたらし続けることでしょう。

[佐藤 健一]

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