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2024年12月18日 09時10分

ドラマ「おむすび」が映し出す現代社会の葛藤と家族模様

ドラマ「おむすび」に見る現代社会の葛藤と人間模様

NHK朝の連続テレビ小説「おむすび」は、ヒロインの米田結(橋本環奈)が栄養士として成長し、平成から令和にかけての激動の時代を生き抜く姿を描いています。この作品は、ただのエンターテインメントに留まらず、現代社会のさまざまな課題や人間関係の複雑さを浮き彫りにしています。

おむすびが描く「家族」のかたち

「おむすび」は、家族のあり方についても深く掘り下げています。例えば、米田家では愛子(麻生久美子)が家を出てしまうという事態に陥ります。家族間のコミュニケーション不足や価値観の違いが浮き彫りになり、視聴者に「自分の家庭でも起こり得ること」として共感を呼んでいます。特に聖人(北村有起哉)が妻の家出に対して行動を起こさない様子に、横澤夏子は「お父さん、あそこで追いかけて欲しかった」と、自分の家族観を重ね合わせてコメントしました。このような状況は、家庭内の役割分担や責任感について考えさせられる部分があります。

このドラマは、単に家族や友人との関係を描くだけでなく、現代の日本社会における問題も映し出しています。IT企業で奮闘する幼なじみの陽太(菅生新樹)や、理容店のホームページ作成を巡る議論などは、デジタル化が進む中での世代間ギャップや新旧の価値観の対立を象徴しています。まるで、古い木造家屋が最新のスマートホーム技術をどうにか取り入れようとしているかのような、そのアンバランスさがドラマを通じて描かれています。

「おむすび」に見る働き方改革の影

また、米田結が働く社員食堂での日替わりメニュー作りに奮闘する姿は、働き方改革の影を垣間見せています。彼女が限られた時間と予算の中でメニューを考案する姿は、現代のビジネスシーンで求められるスピード感やコスト意識を反映しています。結のように、若い世代が新しい視点とアイデアで現場に変革をもたらそうとする姿は、多くの働く人々に勇気を与えるものです。

「おむすび」は、音楽やキャスティング、ストーリーラインを通じて、視聴者を物語の中に引き込みます。堤博明による音楽やB’zの主題歌「イルミネーション」は、物語の感情的な側面を強調し、視聴者に深い印象を与えます。語りを担当するリリー・フランキーの声は、まるで物語全体を温かく包み込むような柔らかさがあり、視聴者をホッとさせます。

このドラマは、ただ単に朝のひとときを賑やかにするものではなく、多くの人々が抱える日常の悩みや夢、そして未来への希望を描いています。まるで、日々の生活の中で食べるおむすびのように、シンプルながらも心を満たしてくれる存在です。視聴者は、結の奮闘や家族の葛藤を通じて、自分自身の生活にも新たな視点を見出すことができるでしょう。

[伊藤 彩花]

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