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2024年12月18日 14時20分

アサド政権崩壊後のシリア:子どもたちの未来を考える

戦争の影は続く:アサド政権後のシリアで見える子どもたちの未来

中東シリアにおける14年にわたる内戦の傷跡は未だ癒えず、未来を担う子どもたちに深い影を落としています。かつての戦場であったタダモン地区では、信じがたい光景が広がっています。子どもたちが人骨で遊ぶという現実は、戦争の非日常が日常として溶け込んでしまった結果なのです。

この地域では、かつてアサド政権による虐殺が行われ、市民40人以上が命を落としました。政権側の「情報機関員」によって後ろ手に縛られた市民が、銃殺され穴に投げ込まれる映像がインターネットに流出し、世界を震撼させました。この「デスマシーン(死の装置)」と呼ばれる国家の暴力装置が、数十万人もの命を奪ったとされています。

子どもたちが見た戦争の風景

タダモン地区では、虐殺の現場が今や道路となり、その上で子どもたちが駆け回っています。無邪気な笑顔を見せる彼らが、自発的に案内してくれるのは、地面に散らばった人骨の場所です。戦争の恐怖を日常的に見てきた子どもたちは、将来に希望を抱くことが難しいと語ります。「シリアには何もないから」と国外への希望を語る子どもたちの声は、戦争がもたらした絶望の深さを物語っています。

戦争の非日常が日常に変わってしまうことの恐ろしさは、シリアだけでなく、世界各地で繰り返される悲劇です。震災後の被災地で、倒壊した家の前で子どもたちが遊び始める光景は、時間が経てば日常に戻るという人間の適応力の現れです。しかし、これが戦争の現場で起きていることを考えると、決して許容されるべきものではありません。

アサド政権崩壊後のシリア:新たな不安と希望

アサド政権の崩壊は、多くのシリア市民にとって解放感をもたらしましたが、一方で新たな不安も生じています。アサド大統領と同じアラウィ派に属する人々は、報復を恐れて避難を余儀なくされており、彼らの多くが不安な日々を過ごしています。

アサド政権下では、アラウィ派の人々が軍や警察などの権力の中枢に多く登用されていましたが、実際に恩恵を受けていたのはごく一部の人たちだけでした。現在、多くのアラウィ派は報復の恐怖とともに、宗派を超えた新しい政府の誕生を切望しています。「多数派も少数派も加わる、市民に尽くす政府であってほしい」との声は、シリアが抱える課題を象徴しています。

未来のシリアに向けた課題

アサド政権下での虐殺や暴力が残した傷跡は、国民の心に深く刻まれています。戦争犯罪を裁く裁判の準備が進められている中、過去の悲劇を繰り返さないためには、国際社会の支援と共に、国内での和解と復興が不可欠です。

「平和は想像から始まる」という言葉がありますが、それはまさに今のシリアに求められていることです。過去の悲惨な出来事を教訓に、国民すべてが希望をもって暮らせる未来を築くために、シリアはどのように変わっていくべきなのでしょうか。その答えは、まだ見つかっていないのかもしれませんが、少なくともその道筋は確実に求められています。

シリアの子どもたちが、いつか人骨ではなく、平和の象徴である花で遊ぶ日が来ることを信じて、国際社会の役割はますます重要になっています。戦争の非日常を日常にさせないために、私たちは何をすべきか、今こそ真剣に考える時が来ているのです。

[中村 翔平]

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