西村雄一氏、審判の新時代とその個性を語る
西村雄一氏、審判の新たな時代を語る
サッカーの試合を観戦する際、選手たちのプレーに目を奪われがちですが、忘れてはならないのはその舞台裏でゲームの流れを静かに見守る審判たちです。今シーズン限りでトップリーグから勇退する西村雄一氏は、その審判としてのキャリアを通じて、サッカー界における審判の役割とその変化について、深い考察を示してくれました。
「だって円だもん」に見る審判の個性
西村氏が「だって円だもん」と発した瞬間は、彼の審判としての個性を象徴するエピソードです。この一言は、2020年の鹿島アントラーズ対横浜F・マリノス戦で生まれたもので、試合中の選手とのコミュニケーションから自然に生まれたものでした。このフレーズは、単なるジョーク以上に、サッカーにおける審判と選手の距離感を縮める重要な役割を果たしたのです。
西村氏は「審判員も10人いれば10色」と語り、審判としての個性が自然に現れることを認めています。彼の言葉通り、審判は単なるルールの執行者ではなく、試合の一部として選手たちと共にサッカーを作り上げる存在です。審判の個性が試合の雰囲気に影響を与えることも少なくありません。
審判のスタイルの変遷
西村氏が若かりし頃の審判は、威厳を示すことが重視されていました。東京教育大学(現筑波大学)などを卒業した教育者としての立場から、上から目線のジャッジが多かったと彼は振り返ります。しかし、時代が進むにつれて、審判のスタイルも変化してきました。今では、選手とのコミュニケーションを重視し、共に素晴らしいサッカーを作り上げる方向にシフトしています。
この変化は、日本サッカーの成熟度を示すものでもあります。西村氏は「主審の仕事はマネジメントに変わってきた」と語り、選手やファンに感動を与えることを考える文化が根付いたことを実感しています。
批判を受け入れることの重要性
審判という職業は、常に批判と隣り合わせです。西村氏は「判定を完全に納得してもらうのは難しい」としながらも、批判を受け入れることの重要性を強調します。例えば、2014年のブラジル・ワールドカップ開幕戦でのPK判定も、賛否両論を呼びましたが、西村氏はその批判も含めて受け入れ、新しい判断を下していくことが審判の役割であると考えています。
彼は後輩たちに「ミスを恐れずにチャレンジを続けること」を勧めています。ミスを恐れるあまり自分のパフォーマンスを発揮できないよりは、勇気を持って挑戦し続けることが重要だというメッセージは、審判だけでなく、どの分野においても共通するものです。
新たな挑戦に向けて
西村氏は今後、審判マネジャーとしてサポートする側に回ります。彼の新たな役割は、審判たちの育成とサポートを通じて、より良いサッカー文化を築くことにあります。この新しい挑戦においても、彼の経験と視点は大いに活かされることでしょう。
審判としてのキャリアを通じて、西村氏はサッカーの試合を彩る存在であり続けました。彼の退場は一つの時代の終わりを告げますが、彼の遺した影響は次世代の審判たちに受け継がれていくでしょう。新たな時代においても、西村氏のように個性を持ち、選手と共に素晴らしい試合を作り上げる審判たちが登場することを期待せずにはいられません。
[佐藤 健一]