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2024年12月24日 12時20分

DMMビットコイン流出事件:北朝鮮「TraderTraitor」関与の可能性

DMMビットコイン流出事件の深層:国家が関与するサイバー犯罪の現実

2024年5月に発生したDMMビットコインからの約482億円相当のビットコイン流出事件は、北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループ「TraderTraitor」の犯行である可能性が高いことが明らかになりました。この事件は、暗号資産市場におけるセキュリティの脆弱性を浮き彫りにし、国家が関与するサイバー犯罪の複雑さと深刻さを再認識させるものとなっています。

北朝鮮のハッカー集団「TraderTraitor」の手口

警察庁と米国のFBI、国防省サイバー犯罪センター(DC3)との共同調査により、犯行グループの具体的な攻撃手法が明らかになりました。まず、3月下旬にTraderTraitorは、LinkedIn上でリクルーターに成りすまし、暗号資産ウォレットソフトウェア会社「Ginco」の従業員に接触しました。これにより、採用前試験を装って悪意のあるPythonスクリプトのURLを送付し、従業員のシステムに侵入することに成功しました。

その後、侵害された従業員のセッションクッキー情報を悪用してGincoの通信システムにアクセスし、DMMビットコインの正規取引を改ざん。結果として、顧客の資産が攻撃グループのウォレットに移動される事態となりました。これらの手口は高度に計画され、実行されたものであり、TraderTraitorが北朝鮮のサイバー攻撃グループ「Lazarus Group」の一部であることを考慮すると、国家レベルの支援があったと推測されます。

暗号資産市場の脆弱性と国際的な対応

DMMビットコイン事件は、暗号資産市場におけるセキュリティの脆弱性を露呈しました。ブロックチェーン分析企業のチェイナリシスによると、2024年には北朝鮮関連のハッカー集団が47件の攻撃を実行し、総額13億4000万ドル(約2077億円)の暗号資産を奪取しています。この数字は前年に比べて102.88%増加しており、国家が関与するサイバー犯罪の増加を示しています。

警察庁は、FBIやその他の国際的な機関と連携し、北朝鮮のサイバー犯罪活動に対する対策を強化しています。また、金融庁や内閣サイバーセキュリティセンターとの協力により、暗号資産関連事業者に対して具体的な手口と対策を周知。業界全体がセキュリティ対策を強化する必要性を強調しています。

企業の対応と将来への課題

DMMビットコインは、この事件を受けて取引所の閉鎖を決定しました。資産と顧客口座は、SBI VCトレードに移管され、2025年3月までに移行を完了する予定です。顧客に対しては、グループ会社の支援により預金を全額補償しましたが、信頼回復には時間がかかるでしょう。

一方で、企業のセキュリティ対策の強化も急務です。サイバー攻撃はますます巧妙化しており、単に技術的な対策を講じるだけでは不十分です。従業員の教育やセキュリティ意識の向上、そして業界全体での情報共有が求められています。

国家が関与するサイバー犯罪は、単に一企業の問題にとどまりません。これらの事件は、国際的な経済や安全保障にまで影響を及ぼす可能性があるため、国際社会全体での協力が不可欠です。暗号資産の未来は、多くの可能性を秘めていますが、それを実現するためには、セキュリティの強化と信頼の構築が不可欠です。

[松本 亮太]

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