日本被団協、被爆80年に向け「証言の大運動」で核廃絶を訴える
被爆80年に向けた「証言の大運動」:日本被団協が語る核廃絶への決意
ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が、東京都内で記者会見を開き、その代表である田中熙巳(てるみ)氏は2025年の被爆80年に向けた「証言の大運動」を展開する計画を発表しました。田中氏は92歳という高齢にもかかわらず、核兵器廃絶への強い意志を持ち続け、その言葉には重みと切迫感が漂います。
田中氏は会見の中で、ノーベル賞委員会から「来年の授賞を考えていたが、今年世論を大きくするために決心した」と伝えられたことを明かしました。受賞は核兵器廃絶への取り組みをさらに強化するための「励まし」であると、田中氏は語ります。この受賞を新たなステップとして、核の脅威に立ち向かう運動を世界規模で展開する決意が固まったようです。
証言の大切さと急がれる行動
田中氏の言葉には、被爆者としての使命感がにじんでいます。「10年もすれば、実相を伝える人がいなくなる」と、被団協の児玉三智子事務局次長は述べ、時間の経過がもたらす課題に対する危機感を共有しました。被爆者たちが高齢化する中で、彼らの経験を次世代にどう伝えていくかが急務となっています。
核兵器の使用がもたらす悲惨な現実を直視し、そこから学ぶことは、現代社会においても重要です。まるで過去の亡霊が未来を導こうとするかのように、被爆者たちの証言は核兵器の恐ろしさを生々しく伝え、私たちにその廃絶の必要性を強く訴えかけています。
核廃絶へのリーダーシップを求めて
田中氏は年明けに石破茂首相と面会する予定であり、日本が「唯一の被爆国」として核兵器廃絶のリーダーシップを取るべきだと述べています。戦後の日本は、平和憲法のもとで非核三原則を掲げてきましたが、近年の国際情勢の変化に伴い、その姿勢が揺らいでいると言われています。
日本に限らず、核兵器の問題は国際社会全体に関わる課題です。核の抑止力が安全を保証するという信念が根強い中で、日本被団協のような市民団体が果たす役割はますます重要となります。彼らの活動は、核の使用を「タブー」とし続けるための呼びかけとなり、核廃絶への道筋を示す灯台のような存在です。
未来へのメッセージを紡ぐ
浜住治郎事務局次長は、来年3月にニューヨークで開催される核兵器禁止条約の第3回締約国会議への参加についても言及しました。被団協は、国際社会と協力しながら、核兵器廃絶に向けた取り組みを強化していきたいと考えています。
また、田中氏の授賞式での演説では、原爆被害への国家補償が実現していないことへの怒りが表明され、国民の犠牲を許さないという強いメッセージが込められていました。戦争や核兵器による被害は、決して補償できるものではないという現実を見据えると、彼らの証言は未来への重要なメッセージであると感じます。
このように、日本被団協が立ち上げる「証言の大運動」は、単なる過去の記憶を語ることに留まらず、未来に向けた行動を促す力を秘めています。彼らの証言を通じて、私たち一人ひとりが核兵器のない世界を目指す歩みを止めないことが求められているのかもしれません。
[伊藤 彩花]