経済
2024年12月25日 11時50分

富裕層課税強化とタワーマンション市場の未来は?不動産プロが語る現状と課題

富裕層への課税強化とタワーマンション市場の行方

富裕層への課税は、財産そのものを対象とする財産税と、財産から生じる所得を対象とする富裕税に大別されます。財産税は過去に一度だけ実施された例があり、預金封鎖や新円切替といった非常手段を伴いました。そのため、財産税の再導入は難しいとされています。一方、富裕税は所得税の補完として位置づけられ、財産の価値が増加している者に毎年課税されるものですが、その税収は低く、評価の難しさも指摘されています。

このような課税制度の見直しが進む中、富裕層の間で高額な不動産購入が活発に行われています。特にタワーマンション、通称タワマンの市場はその象徴的存在となっています。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏によれば、タワマンはもはや住むためのものではなく、投資や節税手段としての対象となっているといいます。

タワマン市場の現状と富裕層の動向

不動産経済研究所の調査によれば、2004年から2023年までに首都圏で供給されたタワマンは約22万戸に達しました。新築マンション全体の約24%がタワマンという数字は、かつての「超高級マンション」というイメージが変わり、今や多くの人が手にすることができる商品となっていることを示しています。しかし、坪単価が600万円を超える物件も珍しくなく、その価格は一般庶民には手が届かないものです。

タワマンを購入しているのは大きく分けて4つのタイプの富裕層です。フロー金持ち、つまり高所得者であるビジネスエリートが自らの成功の証しとして購入することが多いです。また、高齢資産家も多く、相続税対策として購入するケースが目立ちます。さらに、投資家たちはタワマンを金融商品として捉え、売却益を見込んで購入しています。そして、パワーカップルと呼ばれる高収入の共働き夫婦が、交通利便性を求めて実際に住むために購入しています。

富裕層課税とタワマン市場の未来

一方で、タワマンは日本の資産格差を象徴する存在となっています。野村総合研究所の調べによれば、2021年において純金融資産で1億円以上を保有している世帯は約149万世帯。その数は増加傾向にあり、この層がタワマン市場を支えているのです。

このように、富裕層への課税強化とタワマン市場の動向は、日本社会の経済的な変化を反映しているといえるでしょう。タワマンは住むためだけの場所ではなく、金融商品としての側面が強く、今後も富裕層によって支持され続けるのか、それとも政策によって変化が促されるのか、注視が必要です。

[伊藤 彩花]

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