旧安倍派の裏金問題、政倫審で浮かび上がる政治的駆け引き
旧安倍派の混迷と裏金問題の影響:政倫審の舞台裏
12月の衆議院政治倫理審査会(政倫審)で、旧安倍派の苦境が再び浮き彫りになった。特に目立ったのは、旧安倍派の番頭である萩生田光一氏と福田達夫幹事長代行の動向だ。両者は派閥の裏金問題を巡り、複雑な政治的駆け引きの渦中にいる。政倫審は裏金問題の解明を目指し、旧安倍派と旧二階派の議員15人が弁明を行ったが、実態解明には程遠い結果に終わった。
萩生田氏の巻き返しと福田氏の苦境
福田氏は、政倫審での調整が難航する中、旧安倍派内での支持基盤を固めるために、萩生田氏の助力を求めた。11月下旬に福田氏が塩崎彰久副幹事長と共に萩生田氏の事務所を訪れたことが報じられている。萩生田氏は旧安倍派の議員たちから人望を集めており、その協力を得ることで、福田氏は政倫審の出席を渋る議員たちの説得に成功したとされる。
政倫審の実態解明に向けた壁
しかし、肝心の政倫審自体は、裏金問題の実態解明には至らなかった。政治資金パーティー券の販売ノルマ超過分の還流を巡る証言は食い違い、真相は依然として霧の中だ。福田氏は、自身が還流の仕組みを知らなかったと主張し、発覚後に事務所スタッフに確認を取ったところ、「派閥事務局から記載しないようにとの指示があった」ことを把握したという。この説明に疑義を持つ声も少なくない。
旧安倍派の宮下一郎元農林水産相も、還流が再開された経緯について「まだやぶの中」とコメントしており、自民党内でも裏金問題の真相解明を求める声が強まっている。野党は年明け以降も追及を続ける方針を示しており、政倫審を巡る攻防は予断を許さない状況だ。
政治的駆け引きと裏金問題の行方
政倫審を通じて浮かび上がるのは、自民党内の派閥間で繰り広げられる権力闘争の一端だ。旧安倍派と旧二階派の間で繰り広げられる駆け引きは、派閥の影響力を巡る熾烈な争いの象徴ともいえる。特に旧安倍派は、安倍晋三元首相の死去後、派閥内の求心力を失いつつある中で、裏金問題がその影響力をさらに削ぐ結果となっている。
政倫審の結果を受けて、旧安倍派がどのようにして影響力を取り戻すのか、また、福田氏や萩生田氏がどのように政治的立場を築いていくのかは、今後の自民党内の動向を占う上で重要な要素となるだろう。派閥内での信頼関係の再構築や、裏金問題への対応が、彼らの政治生命を左右することになるかもしれない。
これまでのところ、政倫審は裏金問題の全貌を明らかにするには至っていないが、政治的駆け引きの中で浮かび上がる派閥の動きは、まだまだ目が離せない。年明け以降も続くであろう攻防は、自民党内の権力地図を大きく塗り替える可能性を秘めている。
[田中 誠]