映画『遺書、公開。』が描く青春と序列の闇
映画『遺書、公開。』が描く、青春の裏に潜む序列の闇
2025年1月31日に公開予定の映画『遺書、公開。』が話題を呼んでいる。この作品は、陽東太郎氏による同名の漫画を原作とし、吉野北人(THE RAMPAGE)が主演を務め、英勉が監督、鈴木おさむが脚本を手掛けるという豪華な布陣で制作されている。この映画は、私立灰嶺学園2年D組の生徒たちの青春を背景に、序列がもたらす人間の本性を鋭く描いた衝撃のエンターテインメントミステリーである。
序列がもたらす不穏な日常
物語の鍵を握るのは、新学期の春に生徒たちに送られてきた「序列」だ。序列は生徒と担任の全員に対して明確に順位付けされており、序列1位の姫山椿(堀未央奈)はその中心に位置する。彼女は優しく、誰もが認める優等生であったが、突然の自殺によりクラスは混乱に陥る。彼女の死後、クラスメイトたちに姫山からの遺書が届くことから、物語は急展開を迎える。
この映画の魅力の一つは、ありふれた学生生活の日常と、その裏に潜む不穏なストーリーのギャップである。体育祭や文化祭といったイベントが彩る2年D組の1年間の写真が「2Dクラスアルバム」として公開され、その中には笑顔を見せる生徒たちの姿が映し出されている。しかし、序列という見えない力が彼らを支配していることを考えると、その笑顔はどこか不自然にも感じられる。
キャスト陣の熱演と撮影の裏側
映画のスペシャルトーク映像では、主演の吉野北人や志田彩良、松井奏、堀未央奈たちが、それぞれの役に対する思いや撮影時のエピソードを語っている。吉野が演じるのは、序列19位の池永柊夜という内気で地味なキャラクター。この役を通じて、観る者が共感しやすい立場としての存在感を醸し出している。
撮影現場の様子も映像に収められており、同世代のキャストたちが集まったことで、自然と学生時代のような活気ある雰囲気が生まれたという。カメラが回っていない時間には雑談で盛り上がる一方で、教室のセットに入ると、一転して作品の持つ暗い雰囲気に引き込まれていく様子がリアルに伝わってくる。
序列社会への警鐘
『遺書、公開。』は、序列がもたらすプレッシャーとそれに伴う人間関係の歪みを描くことで、現代社会における競争の過酷さを映し出している。序列という概念は、学生生活だけでなく、社会全体にも通じるものであり、私たちの日常に潜む見えない力学を象徴している。
日本の教育現場では、これまでにも序列や成績での比較が生徒たちに与える影響が問題視されてきた。序列が人間関係にどのような影響を及ぼすのか、そしてそれがどのようにして個々の心を蝕んでいくのかを考えさせられる作品だ。この映画が観る者に投げかけるメッセージは、単なるエンターテインメントを超え、社会的な示唆に富んでいる。
映画『遺書、公開。』は、序列というテーマを通じて、私たちが見落としがちな日常の中の不安定さを浮き彫りにする。序列の中で揺れ動く若者たちの葛藤と成長を描くこの映画は、観る者にとって考えさせられることが多いだろう。2025年1月の公開が待ち遠しい作品である。
[中村 翔平]