韓国観光業界に非常戒厳の影響、釜山で予約65%減少
韓国の観光業界に忍び寄る影
12月3日に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が発表した「非常戒厳」は、韓国全土に大きな影響を与えています。その余波は、韓国経済の要とも言える観光業界にまで波及。ソウルを含む主要都市での観光業者は、外国人観光客の急減に直面し、特に釜山市では旅行予約が大幅に減少しています。韓国紙・朝鮮日報の報道によれば、釜山市と釜山観光公社が市内の観光業者40社を対象に行った調査で、観光関連の全業種で予約取り消しや問い合わせが増加していることが明らかになりました。特に1~3月期の予約は前年同期比で約65%減少しているとのことです。
釜山市の朴亨埈(パク・ヒョンジュン)市長は、釜山が安全で魅力的な旅行地であることを強調し、観光客に快適で安全な環境を提供するために尽力していると述べました。しかし、戒厳令がもたらした不安感は、観光客たちの心に深く刻まれてしまったようです。
戒厳令の背景とその影響
尹大統領の非常戒厳は、政治的混乱と社会不安を背景にしたものです。彼は、国会への人の出入りを制限し、軍を動員して国会における戒厳解除要求決議案の採決を妨害するよう指示しました。このような動きが明らかになったことは、国内外に大きな衝撃を与えています。こうした強権的な手法は、過去に韓国が経験した軍事政権時代を思い起こさせ、多くの人々に不安を与えています。
この不安は、観光業界だけでなく、他の経済分野にも影響を及ぼし始めています。例えば、韓国のレンタカー大手「SOCAR」が済州島で提供しているカーシェアリングサービスの予約率は、戒厳令以降約50%も下落しました。SOCARの関係者は、冬という季節的要因も影響している可能性があると述べていますが、戒厳令が観光客の心理に与えた影響は無視できません。
観光業界の今後の展望
観光業界は、韓国経済の重要な柱の一つであり、外国人観光客の減少はその成長に大きな打撃を与える可能性があります。特に、韓国は中国や日本、東南アジア諸国からの観光客を多く受け入れており、これらの国々との観光交流が縮小することは、地域経済にも影響を及ぼすでしょう。
一方で、韓国政府は国際社会に向けて、国の安全保障体制が確固たるものであることをアピールし、観光業を含む経済活動を正常化させるための努力を続けています。韓米同盟を基盤に、日本や中国など主要国との緊密なコミュニケーションを維持し、国家間の交流や貿易に支障がないことを積極的に伝えています。しかし、観光客の不安を払拭するためには、政府の努力だけではなく、観光業者や地域社会が一丸となって観光地の安全性をアピールし、魅力を再確認することが求められます。
[松本 亮太]