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2024年12月27日 21時21分

近江高校野球部、多賀章仁監督の退任で新時代へ

近江高校野球部、多賀章仁監督の退任がもたらす新たな風

2023年10月27日、近江高校(滋賀県彦根市)にとって一つの時代が幕を閉じることが発表された。長らく同校野球部を率いてきた多賀章仁監督(65)が来春、指揮官の座を降りるというニュースだ。彼の退任は、単なる指導者交代以上の意味を持つ。部員やファンにとっての「多賀監督時代」とは何だったのか、そしてその後を担う小森博之コーチの新体制について考えてみたい。

多賀監督の功績とそのスタイル

多賀監督は1989年に近江高校野球部の監督に就任し、春夏通算23回の甲子園出場を果たしてきた。特に2001年と2022年には、滋賀県勢としては最高成績となる準優勝をそれぞれ達成。彼の指導の下、近江は攻守に手堅い「近江野球」を築き上げ、滋賀を代表する強豪校としての地位を確立した。

この「近江野球」、一言で表すならば慎重かつ緻密。まるでチェスの名手が一手一手に込める戦略のように、攻守両面での計算された動きが特徴だ。選手たちは、ただ力強く打つだけではなく、状況に応じた細やかなプレーを求められる。多賀監督の指導は、選手に対する信頼と期待が見事に調和していた。

新体制に寄せる期待と不安

高校野球界における近江の位置づけ

近江高校は、滋賀県勢としては珍しいほどの甲子園常連校だ。しかし、近畿地方で唯一、春夏を通して甲子園での優勝経験がないという現実もある。多賀監督は、「甲子園で優勝するための土台はつくれた」と語っていたが、この言葉には、次世代の指導者たちへの期待と課題が込められている。

滋賀県全体の高校野球界にとって、近江の存在は希望の光ともいえる。地元の若者たちにとっては、甲子園出場を夢見るきっかけとなり、さらには全国の強豪校との対戦を通じて得られる経験は計り知れない価値がある。

育成功労賞受賞の裏にあるもの

2023年、多賀監督は「育成功労賞」を受賞した。この賞は、高校野球の育成と発展に貢献した指導者に贈られるもので、多賀監督の長年にわたる努力と、滋賀県内外における野球の発展への尽力が評価された形だ。彼が築いたチーム文化や選手育成の方法論は、今後も近江高校に残り続けるだろう。

今回の退任は、多賀監督にとっても、また近江高校にとっても、第二のスタート地点ともいえる。総監督としてどのようにチームをサポートするのか。彼の経験と知識がバックアップとして機能することは、新体制にとって大きな力となるはずだ。

[高橋 悠真]

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