麻枝 准が描くスマホRPGの新境地『ヘブンバーンズレッド』の魅力
麻枝 准の「心にブッ刺す」ゲームデザイン哲学
ゲームクリエイターとしての麻枝 准氏は、単なるシナリオライターや作曲家ではなく、プレイヤーの心を深く揺さぶる体験をデザインする「芸術家」とも言える存在だ。彼の最新作『ヘブンバーンズレッド』は、スマートフォン向けRPGとして広く支持を集めており、その成功の背後には、麻枝氏の独自のクリエイティブ哲学がある。
スマートフォンという新たな舞台
麻枝氏は、約8年前にビジュアルアーツの前社長からスマートフォンゲームの開発を依頼されたことをきっかけに、スマホゲーム市場に参入した。その際、「スマホでどうやって物語を伝えるか」という問いに直面したが、最終的に彼のアプローチは「スマホだからといって特別なことをしない」というものだった。PCノベルゲームを作るのと同じ感覚で、シナリオと音楽を創り出す。この一貫した姿勢が、スマホでの新たな物語体験を生み出した。
スマートフォンは、PCや家庭用ゲーム機と比べて圧倒的に普及しているデバイスだ。これにより、麻枝氏のシナリオや音楽がより広い層に届けられることになった。彼は、その広がりを「間口が広がった」と表現する。これまでコアなゲーマーにしか届かなかった作品も、スマホというプラットフォームを通じて、多くの人々の心を打つことができるようになったのである。
RPGにおけるセリフの力
RPGというジャンルにおいて、麻枝氏は「RPGのシナリオはセリフだけで成立する」という新たな発見をしたという。ノベルゲームでは、立ち絵や地の文が重要な役割を果たすが、RPGではキャラクターの会話そのものに焦点を当てられる。この発見により、彼はシナリオの自由度を大きく広げることができた。
また、RPGにおけるセリフの力を最大限に引き出すために、ライトフライヤースタジオの技術力を活用し、リッチな演出を実現している。これにより、プレイヤーはキャラクターたちの会話を通じて、より深い物語体験を味わうことができる。
美少女と冒険する楽しさ
麻枝氏にとって、RPGの魅力は「美少女が戦って、強くなっていくのを見る」という点に尽きるという。このシンプルな楽しみが、彼のゲームデザインの原動力となっている。『ヘブンバーンズレッド』でも、プレイヤーは美少女たちと共に冒険し、成長を見届けることで、深い感情的なつながりを感じることができる。
彼はまた、戦闘シーンにおいても、スタイリッシュかつダイナミックな演出を求めた。これにより、プレイヤーは単なる戦闘ではなく、物語全体の一部として戦闘を体験することができる。このように、彼の作品ではシナリオとゲームプレイが密接に結びついているのだ。
新たなインプットとクリエイティブの融合
麻枝氏は、『ヘブンバーンズレッド』の開発期間中に、多くのSF作品や音楽からインスピレーションを得ている。特にSF小説からは、新しい世界観や物語の構築方法を学び、ゲームに取り入れることで、より豊かな物語体験を提供している。
彼はまた、音楽においても、作品のテーマや雰囲気に合ったものを選び、ゲーム体験をより鮮やかにしている。ドラムンベースやスペイシーな音楽を取り入れることで、プレイヤーに新しい感覚を与えることに成功している。
演出に込める情熱
麻枝氏は、ゲームの演出に対しても非常に細かいこだわりを持っている。彼は、0コンマ何秒という単位で演出を調整し、プレイヤーが最大限に物語に没入できるよう工夫を凝らしている。これにより、プレイヤーは感情の波に乗りながら、キャラクターたちの旅を共にすることができる。
このように、麻枝氏のゲームデザインは、単なるストーリーの提供に留まらず、プレイヤーの心に深く刻まれる体験を提供することを目指している。彼の作品は、ゲームというメディアを通じて、プレイヤーに深い感動を与える力を持っているのだ。
麻枝氏のクリエイティブ哲学は、今後も多くのプレイヤーの心を捉え続けるだろう。彼の作品がどのように進化し、どのような新しい感動を提供してくれるのか、期待は尽きない。彼の手がける次なる作品がどのような形でプレイヤーに「鋭利な刃」を届けるのか、私たちはその日を心待ちにしている。
[高橋 悠真]