映画『ミステリと言う勿れ』が地上波初登場、菅田将暉の“フラットさ”とは
映画『ミステリと言う勿れ』:菅田将暉が演じる久能整、その“フラットさ”の魅力
映画『ミステリと言う勿れ』が2023年の劇場公開から地上波に初登場します。この作品は、2022年にフジテレビの月9枠で放送されたドラマから派生したもので、主人公・久能整(菅田将暉)の“フラットさ”を軸に、観客を魅了しています。この映画は、田村由美による累計発行部数1900万部を超える人気漫画を原作としており、広島を舞台にした遺産相続をめぐるミステリーが描かれています。
久能整のキャラクター性と菅田将暉の演技力
久能整は、天然パーマのもじゃもじゃ頭と、おしゃべりがトレードマークの大学生です。彼の持ち味は、「僕は常々思ってるんですが……」から始まる膨大な知識と独自の価値観による持論を淡々と述べることにあります。このキャラクターの魅力は、固定観念にとらわれない柔軟な思考を持ち、他者に新しい視座を提供するところにありますが、自身の考えを押しつけないという点も重要です。菅田将暉はこの久能整というキャラクターを演じる際、感情的にならず、常にフラットでいることを心がけています。彼の声のトーンや表情はほとんど変わらず、まるで静かな湖面のごとく安定しています。
この“フラットさ”は、共演者たちとの掛け合いにおいても重要な要素です。例えば、遺産相続で感情的になる狩集家の面々との対峙においても、整は冷静に、しかし確実に会話を進めていきます。これにより、物語全体に緊張感とユーモアが生まれ、観客を引き込む力となっています。
ミステリーとヒューマンドラマの融合
『ミステリと言う勿れ』は、単なるミステリーにとどまらず、ヒューマンドラマとしての側面も強調されています。広島での遺産相続を巡る物語は、単なる謎解きではなく、登場人物たちの感情や背景に深く関与しています。狩集家の遺産相続に巻き込まれる整ですが、その目的はただの謎解きではなく、狩集汐路(原菜乃華)が抱える父の死の真相を探ることです。このように、個々のキャラクターが抱える問題や感情が絡み合いながら、物語が進行していきます。
また、狩集家の遺産相続にまつわるゲーム性も見逃せません。遺言書に記された「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」という指示に従い、狩集家の候補者たちはそれぞれの動きを見せます。このゲーム性が物語にスリルを与え、観客を飽きさせません。
豪華キャストが生み出す化学反応
それぞれが個性的なキャラクターを演じる中で、菅田将暉の整がどのように絡んでいくのか、その掛け合いもまた見どころの一つです。町田啓太が演じる狩集理紀之助のインテリな一面や、松下洸平が演じる車坂朝晴の弁護士を目指す若者としての葛藤が、整との関わりの中でどのように表れていくのか、観客は目が離せません。
広島編がもたらす新たな視点
映画版『ミステリと言う勿れ』では、原作ファンの間でも人気の高い“広島編”が描かれています。このエピソードでは、広島を訪れた整が、狩集家の遺産相続に巻き込まれていくというストーリーが展開されます。広島を舞台にしたこの物語は、地域性や文化の違いを感じさせつつ、普遍的な人間ドラマを描いています。
遺産相続をめぐる争いには、家族の絆や裏切り、愛憎が交錯し、観る者に深い感動を与えます。また、整がどのようにしてこれらの謎を解き明かしていくのか、そのプロセスもまた見どころです。彼の持論がどのように展開され、最終的に登場人物たちにどのような影響を与えるのか、映画を通してじっくりと味わっていただきたいところです。
映画『ミステリと言う勿れ』は、単なるミステリーを超えた、深いテーマとキャラクターの魅力が詰まった作品です。菅田将暉の演技と、豪華キャストによる掛け合い、そして広島を舞台にした独特の雰囲気が、観客に新たな視点を提供してくれることでしょう。この作品を通して、私たちもまた、久能整のように柔軟な思考を持ち続けることの大切さを学びたいものです。
[高橋 悠真]