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2025年01月07日 16時12分

『コールミー・バイ・ノーネーム』が描く新世代ガールズラブの魅力と挑戦

『コールミー・バイ・ノーネーム』が描く新世代ガールズラブの魅力

物語の中核を成す「名前」のテーマ

『コールミー・バイ・ノーネーム』は、英知大学に通う世次愛(演:工藤美桜)が、ゴミ捨て場に捨てられていた謎めいた美しい女性、古橋琴葉(演:尾碕真花)と出会うことから始まります。琴葉は愛に対し、彼女の本当の名前を当てるまで「恋人」でいることを提案します。この設定はただのロマンスを超え、「名前」というアイデンティティの探求を通じて、自己発見の旅を描いています。

この「名前」に焦点を当てたストーリーは、視聴者にとっても現代の自己認識やアイデンティティの問題を考えさせるきっかけとなります。特に、SNSやデジタルなコミュニケーションが主流となった現代社会では、自分自身をどのように定義し、他者とどのように関わるのかが重要なテーマです。

キャストの個性と監督の視点

イベントでは、監督の枝優花がキャストにユニークなあだ名を付ける場面がありました。工藤美桜には「泣き虫頑固」、尾碕真花には「おしゃべりチワワ」と命名されました。これらのあだ名は、キャストの個性をユーモラスに表現し、撮影現場の和気あいあいとした雰囲気を象徴しています。

尾碕真花は、現場でのムードメーカーとしての役割を自覚し、「おしゃべりチワワ」というあだ名を受け入れつつ、撮影における自分の存在感を振り返りました。一方、工藤美桜は、台本の読み合わせで涙を流すほど感情移入していたことを明かし、その真摯な姿勢が作品に深みを与えています。

厳しい撮影環境を超えて

撮影は必ずしも順調だったわけではありません。特に海でのシーンでは、工藤が水を苦手としていることもあり、雨や寒さに直面する過酷な環境下での撮影となりました。しかし、監督やスタッフの支えによって、キャストたちは困難を乗り越え、映画の完成度を高めることができました。

枝優花監督は、この作品を通じて、キャストの成長を見届けたといいます。特に工藤美桜の「弱さが強さに変わった」と評し、尾碕真花については「腹の底に潜り込んで引き出すことができた」と語っています。監督の言葉は、キャストにとって大きな励みとなり、作品の質をさらに高める原動力となりました。

新世代ガールズラブの可能性

『コールミー・バイ・ノーネーム』は、単なるラブストーリーにとどまらず、自己発見と他者との関係性を探る深いテーマを持っています。現代の多様性を反映し、視聴者に新たな視点を提供するこの作品は、ガールズラブジャンルの新たな可能性を切り開いています。

斜線堂有紀の原作が持つミステリアスかつ感情豊かな物語は、現代の視聴者に対して強いメッセージを投げかけます。名前を当てるというシンプルなプロットは、自己認識と他者認識の複雑さを浮き彫りにし、観る者に深い考察を促します。

このように、『コールミー・バイ・ノーネーム』は、斜線堂有紀の原作を基にしながら、独自の映像表現とキャストの魅力によって新たな魅力を引き出しています。これからも、このような挑戦的で新しい物語が多くの人々に届けられることを期待したいですね。

[山本 菜々子]

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