エンタメ
2024年12月02日 16時10分

「ふてほど」が流行語大賞に!TBSドラマの成功戦略とは?

「ふてほど」流行語大賞、TBSの戦略勝ちに隠れた流行の秘密

2024年の年末を迎え、恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」が発表されました。今年の注目ワードは、俳優の阿部サダヲが主演を務めたTBS金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」の略称「ふてほど」。この言葉が年間大賞を受賞したことは、視聴者にとっても意外な喜びとなっています。しかし、なぜこの言葉がこれほどまでに浸透したのでしょうか?

現代の視聴率の価値

「ふてほど」が流行語大賞に選ばれた背景には、TBSの巧妙な戦略がありました。全10話の平均世帯視聴率は7.4%と、数字だけを見ると驚くほどのヒット作とは言えません。しかし、現代のテレビ視聴は、リアルタイムの視聴率だけで測れません。今では配信サービスやSNSでの反響が重要な指標となっています。数字以上に、ドラマのテーマやキャラクターが視聴者の心に残ることが重要です。

四文字略称の魔法

ドラマの中で描かれた「四文字略称が当たる」というシーンは、TBSの制作陣が意識的に仕掛けた戦略の一部です。このアイデアは、過去の大ヒットドラマ「半沢直樹」の「倍返し」や「あまちゃん」の「じぇじぇじぇ」にも通じるものがあります。コンテンツを簡潔に表現できる略称は、視聴者にとって覚えやすく、SNSでの拡散性も高まるため、流行語を生み出すための重要な要素となっています。

時代のモヤモヤに触れる物語

「不適切にもほどがある!」は、1986年から2024年にタイムスリップした昭和の体育教師が、現代のコンプライアンス社会に不適応ながらもさまざまな視点を提供する物語です。昭和と令和の価値観のギャップを描き、時代の「モヤモヤ感」を巧みにすくい上げることで、多くの視聴者に共感を呼びました。これは、単なるコメディーではなく、現代社会への風刺としても受け取られているのです。

新たなスターの誕生

さらに、「ふてほど」が注目を集めた理由の一つに、女優・河合優実の存在があります。彼女はこのドラマで地上波連続ドラマ初のレギュラー出演を果たし、昭和のスケバン役として視聴者を魅了しました。「令和の百恵ちゃん」と称される彼女の演技は、多くのファンを生み出し、続く出演作でも成功を収めています。

ユーモアとリアリティの融合

この作品の成功要因には、脚本家・宮藤官九郎の存在も欠かせません。彼の手掛ける脚本はユーモアとリアリティの絶妙なバランスを持ち、視聴者を引き込みます。また、主題歌「二度寝」は、昭和と令和を行き来する主人公の心情を巧みに表現し、多くの人々の心に響きました。

言葉の力と未来への期待

「ふてほど」という言葉が流行語大賞に選ばれたことは、ただの偶然ではありません。制作陣の戦略と作品の魅力が相まって、視聴者の心に深く残るものとなりました。阿部サダヲも「自分たちで言ったことは一度もない」と笑いながらも、視聴者からの熱い支持を感じています。彼は続編の可能性に触れ、「もし続編があったら頑張りたい」と意欲を見せています。

「ふてほど」は、ただの流行語ではなく、現代社会の複雑さや人間関係の奥深さを示す指標となりました。今後も、こうした言葉が私たちの生活を彩り続けることでしょう。視聴者の期待を背負い、テレビと配信の境界を超えて、新しいエンターテインメントの形を探るTBSの次なる一手にも、目が離せません。

[山本 菜々子]