長生炭鉱の遺骨発掘と日韓関係の課題に向き合う市民団体の挑戦
忘れられた犠牲者と向き合うための挑戦:長生炭鉱の遺骨発掘と日本政府の対応
山口県宇部市の床波海岸には、海中から突き出る特異な形の煙突状の構造物が存在する。これはかつての長生炭鉱の換気口であり、多くの鉱夫たちにとって生命線となっていた。この炭鉱では、1932年から石炭の採掘が行われ、特に太平洋戦争中には石炭需要の急増により無理な採掘が行われていた。しかし、1942年2月3日、トンネルの隙間から海水が侵入し、多くの鉱夫が水没事故によって命を落とす惨事が発生した。その中で犠牲となった136人は朝鮮人であり、彼らの存在は長らく歴史の中に埋もれていた。
市民団体の奮闘と発掘作業の進展
「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」という市民団体は、この忘れられた歴史を掘り起こすために30年以上にわたり活動を続けている。彼らは犠牲者の遺骨を家族のもとに返すという信念のもと、地道な調査と発掘を進めてきた。クラウドファンディングを通じて集めた資金で行われた発掘作業は、ついに9月25日に坑道入口を発見するという成果を上げた。これにより、遺骨発掘の具体的なステップがようやく見えてきた。
しかし、日本政府の協力が得られない中での活動は困難を極めている。福岡資麿厚生労働相は「安全性が確認できておらず現時点では実地調査は考えていない」と発言し、政府の消極的な姿勢が浮き彫りとなった。これに対し、社民党の福島瑞穂党首らが記者会見を開き、政府に対して真相究明と遺骨発掘を促したが、現時点では大きな進展は見られない。
韓国との関係と市民の関心
一方で、韓国側でもこの問題に対する関心が高まっている。2023年が「韓日国交正常化60周年」であることを背景に、両国市民の関心と韓国政府の参加が重要とされている。韓国の潜水士イ・ウォンヨン氏は、「真相究明と犠牲者の遺骨発掘に役立ちたい」と積極的に支援の意向を表明した。このような国際的な協力が、今後の進展に寄与することが期待されている。
歴史を見つめ直すための必要性
佐渡金山の追悼式においても、韓国側の不参加や、日本政府の曖昧な態度が批判を受けている。靖国神社参拝で物議を醸した生稲政務官が参加したが、追悼の挨拶には強制動員への謝罪や反省の表現が含まれておらず、韓国側の不満を呼んだ。これに対し、日本の市民団体や一部の政界関係者は、歴史問題について政府間での議論を進めるべきだと指摘している。
長生炭鉱や佐渡金山の事例は、戦時中の悲劇がいかにして歴史の中に埋もれ、日韓関係に影響を与えているかを如実に示している。こうした問題を解決するためには、日本政府の積極的な関与と、両国の市民が協力して歴史を見つめ直す姿勢が求められている。過去を正しく理解し、繰り返さない未来を築くためには、歴史的事実の究明とその教訓を次世代に伝える努力が必要である。
今後、長生炭鉱の発掘作業が進展し、犠牲者の遺骨が家族のもとに返されることが実現すれば、日韓間の歴史的和解に向けた重要な一歩となるだろう。両国政府および市民が、この問題に対する真摯な姿勢を持ち続けることが重要である。
[伊藤 彩花]