経済
2024年12月21日 11時11分

SDV時代到来?日本メーカーの真価を問う

SDVの時代到来?日本メーカーの立ち位置を考察する

自動車業界は、電気自動車(EV)からソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)へと新たな転換期を迎えていると言われています。だが、果たしてこの変化は本当に革命的なものなのでしょうか。マーケティングやブランディングの専門家である山崎明氏は、このSDVの急進的な評価に対して一石を投じています。彼は、SDVの進化は正常な進化の一環であり、日本の自動車メーカーが出遅れているとの見解は誤解であると指摘します。

日本メーカーは遅れているのか?

数年前には、日本の自動車メーカーが電気自動車(BEV)への対応に遅れをとっているという批判が盛んでした。しかし、現時点での状況を見れば、必ずしもそれが正しい判断ではなかったことが明らかです。欧州のメーカーが急いでBEVにシフトした結果、現在では苦境に立たされているケースも少なくありません。実際に、BEVに熱心だった日産も経営危機に直面しています。では、SDVに関してはどうでしょうか。多くの人々が「次の時代のトレンドはSDVだ」と述べていますが、この見解には疑問が残ります。

SDVとは何か?

SDV、つまりソフトウエア・ディファインド・ビークルは、ソフトウエアによって機能を追加・改善できる車を指します。OTA(Over the Air)による無線更新が可能なことがこの概念の中心にありますが、これは目新しい技術ではありません。1990年代から普及したCAN-BUSシステムの進化系であるCAN FDやFlexRayが、既に車全体を制御するネットワークシステムとして広く使われています。現在の車は、すでにソフトウエア主体で動いていると言って過言ではないでしょう。

テスラのリコールとSDVの現実

最近のニュースでは、テスラが約70万台のリコールを発表しました。タイヤの空気圧を監視するシステムに不具合があり、無償のソフトウエアアップデートで対応するとのことです。この事例からもわかるように、SDVの中心にあるソフトウエアの更新は、ハードウエアの不具合を解決する万能薬ではないのです。テスラはOTAによるアップデートで先行していると言われますが、これにも限界があります。多くのケースで、安定したWi-Fi接続が必要であり、全てが無線で完結するわけではありません。

日本メーカーの強みを磨く時

山崎氏は、日本メーカーがSDV分野で出遅れているとの見解は根本的な勘違いであると述べます。彼は、日本の自動車メーカーが持つ堅実な技術基盤や、すでに多くの車種で実装されているDCM(車載通信モジュール)の普及を評価しています。これは、トヨタなどのメーカーがベーシックカーにまで標準搭載していることからも明らかです。

[山本 菜々子]

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