科学
2024年11月29日 12時15分

PFAS問題と新技術の挑戦:日本の水質改善と無限リサイクルプラスチックの展望

「永遠の化学物質」PFASとその挑戦

近年、PFAS(ペルフルオロアルキル化合物)は「永遠の化学物質」として注目され、環境中に広く存在し続けることが懸念されている。日本国内では、環境省と国土交通省が初めて全国的な水道水のPFAS含有量調査を実施し、その結果が公表された。2020年度以降、12都府県で暫定目標値を超過したが、最新の2024年度の調査では超過事例がゼロとなった。この結果は、自治体や水道事業者による水源の切り替えや活性炭による浄化処理の成果であると考えられている。

PFASは、1万種類以上の物質を含む有機フッ素化合物であり、耐熱性や防水性、防油性の特性から、布製品や食品容器、フライパンのコーティングなどに広範に使用されてきた。これらの物質は、分解されにくく、環境中に長期間存在し続けることから、人体への蓄積が懸念される。また、発がん性や免疫機能の低下など、健康への影響も報告されている。

世界的には、PFASの規制が進んでいる。アメリカでは、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の基準値をそれぞれ1リットルあたり4ナノグラムとする厳しい基準を設けている。一方、日本ではこれらの物質の合計で1リットルあたり50ナノグラムと暫定的な目標値を設定している。

技術革新によるPFAS除去の可能性

PFASの問題を解決するためには、技術革新が必要だ。最近の研究では、活性炭フィルターを使ったポット型浄水器が、PFASを大幅に除去できることが示されている。研究チームの実験では、活性炭フィルターを使用することで、PFASの濃度を81%から96%まで減少させられることが確認された。さらに、フィルターを使用した後に水を沸騰させることで、濃度は最大99.6%まで低下する。この結果は、家庭用の浄水器がPFAS対策として有効であることを示唆している。

しかし、浄水器の利用にはコストがかかるため、国や自治体が主導して規制と浄水を進めるべきだという意見もある。安全な飲み水がぜいたく品になることを防ぐためには、公共インフラとしての対策が求められる。

プラスチック問題と循環型社会の実現

PFAS問題と並行して、プラスチックの環境負荷も大きな課題となっている。ローレンス・バークレー国立研究所の科学者チームは、無限にリサイクル可能なプラスチック、ポリジケトンアミン(PDK)の開発に成功した。PDKは、大腸菌を用いて生成され、化石燃料由来のプラスチックよりも耐熱性に優れている。この新素材は、化石燃料由来のプラスチックに取って代わる可能性を秘めている。

研究チームは、PDKプラスチックの商業化を目指し、Cyklos Materialsというスタートアップ企業を設立した。今後、PDK製品のサンプル提供を開始し、3年以内に新製品の販売を予定している。無限リサイクル可能なプラスチックの普及は、環境負荷を大幅に減少させる可能性がある。

まとめると、PFASとプラスチックの問題は、現代社会が直面する大きな環境課題である。これらの問題に対処するためには、技術革新と規制の強化が不可欠だ。日本においても、政府と自治体が協力して水質管理を徹底し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めることが求められている。また、研究者や企業も、新技術の開発と普及に向けた努力を続ける必要がある。これによって、未来の世代に安全で持続可能な環境を提供することができるだろう。

[山本 菜々子]